![]() | ジョニ・ミッチェルは元々フォークシーンから出て来た人らしいのだが、除々にジャ ズ畑の人達との交流を深め、独自の世界を確立していく。このアルバムは、まだ フォークのイメージが強い頃のもので、ほとんどの曲は彼女のギターあるいはピ アノの弾き語りによるものだ。「ウッドストック」「サークル・ゲーム」といった有名曲 が多いせいか、聴きやすくまた飽きがこない。あの独特のコード進行や歌詞とい ったジョニ独特の世界が既に出来上がっているようだ。彼女は現在活躍している 女性ロックシンガー達のパイオニア的存在であり、彼女なくして後進達の成功は あり得なかったとすら言われている。シャウトしたり早弾きしたりしなくても、女性 がロックの世界でやっていけることを、ジョニはこの時既に証明していたのだ。 |
![]() | フリートウッド・マックの中では、この人がソロで一番成功した。このアルバムは彼 女にとって2枚目のソロアルバムである。前作『麗しのベラドンナ』が大ベストセラ ーとなったが、あまりにカントリー臭い作風が今ひとつ気に入らなかった僕として は(カントリーが嫌いな訳ではない)、こちらのアルバムの方がスティービーらしい と思う。あの靄のかかったようなサウンドに、鼻にかかった声、これは正にスティ ービー・ニックス独特の世界である。曲も彼女のイメージそのままで、要するにど こを切ってもスティービー、なのである。彼女の声とサウンドに酔いつつ、ラストの 「美しき野獣」で完全にとどめをさされてしまう。ジャケットも含め、妖精スティービ ー・ニックスにはどんな男も骨抜きだ。 |
![]() | ローラ・ニーロは自身の作品はあまり売れなかったけど、他人がカバーしたローラ の曲にはヒット曲が多い。ソングライターとしては、とても優れていたということだ。 ローラ・ニーロはニューヨーク出身、幼少の頃から、路上でR&Bを歌って大きくな ったということだが、その音楽には確かにその影響が感じられる。しかし、ローラ の音楽を聞いているとそれ以上に、聴く者の心をわし掴みにするような激しいもの を感じる。このアルバムなど、その典型的な例で、本人のピアノ弾き語りによるシ ンプルなサウンドが中心なのだが、それだけにその歌が胸に迫ってくる。見かけ は穏やかだが、激しく心をゆさぶるのだ。歌詞もさることながら、ローラの内側か ほとばしる叫びのようなものが、聴く者にも対峙する覚悟を要求する。 |
![]() | パール・ジャムは90年代において最も重要なロックバンドである、と言ってしまっ ても良いだろう。若者の代弁者として圧倒的な支持を集め、チケット代金が高過 ぎるとして、大手チケット販売会社と闘争を続けていたのは記憶に新しい。ただこ れが現状を打破するまでには至らず、単に話題を提供するにとどまってしまった のは残念だ。言い換えれば、ロックビジネス界の現況は一人気バンドが窮状を訴 える位では、どうにもならない所まで肥大化しているという事なのだろう。常識を打 破するべく生まれたロックが、社会常識に取り込まれ単なる娯楽に成り果ててい る、という現実を真剣に受け止めパール・ジャムは闘い続けるのだろう。好き嫌い はともかく、その姿勢は素晴らしい。音楽も正に王道を行くロック。 |
![]() | まきれもなく、ロック界が誇る名盤である。今ほどテクノロジーの発達していない時 代に、これだけ先鋭的なアイデアに溢れたアルバムを作り上げたことは、驚異で すらある。ピンク・フロイドというバンドは、前衛という言葉でくくられる事が多いが ただの前衛ではここまで感動的な音楽は作れない、と思う。ミュージシャンに必要 な演奏力、作曲能力、アイデア、イメージ戦略、そのすべてが最高のレベルで結 実し、このアルバムが生まれたのだ。SEから始まり、「生命の息吹き」につながる オープニングは感動的だ。ドラマチックな「虚空のスキャット」を経て、B面のラスト まで続いていく美しくも狂おしい世界は、今もなお色褪せない。内なる狂気、をテ ーマにした歌詞と共に普遍性を保ち続けている。名作。 |
![]() | クリッシー・ハインドは文句なしにカッコいい。男が見てもそう思うのだから、女の 目からすればなおさらだろう。このアルバムは、ブリテンダーズの初来日公演の 直前に出たもので、ファーストが成功したことによるブレッシャーなど微塵も感じさ せない力作だ。確かに、パンク以降のニューウェイブ旋風の中から出てきたバン ドではあるが、単なるビートバンドとはひと味違う個性を感じさせた。それがクリッ シーによるものであるのは明らかで、この後幾度もメンバーチェンジをするが、イ メージが変わることはなかった。このアルバムでもクリッシーは全開で、「メッセー ジ・オブ・ラブ」や「トーク・オブ・ザ・タウン」でそのカッコ良さを見せつける反面、「 アイ・ゴー・トゥー・スリープ」では泣かせる。稀有な存在だ。 |
![]() | 僕にとってはクイーンのアルバムはどれも名盤なのだが、一枚選ぶとなるとこれ だろう。彼らにとって3枚目にあたるが、前2作で見せた曲作りのうまさと、高度な 演奏技術、そして緻密に構築されたアルバム制作のアイデアを、このアルバムで よりポップな方向に昇華させ、新たなイメージとファンを獲得した。ここでは今まで 見せなかった様々な音楽性の曲がバランス良く配置され、常に聴く者の耳を刺激 する。そして、B面後半の盛り上がりは圧巻だ。タイプの違う曲が組曲風につなが っていく様子はビートルズの『アビー・ロード』を連想させる。僕は常々、クイーンは ツェッペリンのフォロワーではなく、ビートルスの後継者ではないかと思っていたが 、その印象はこのアルバムで作られたと言っていい。 |
![]() | 最初にストーンズに接したのが、このアルバムだった。だからという訳ではないが 、70年代のストーンズのアルバムの中では『スティッキー・フィンガーズ』と双璧を 成す傑作と言っていいのではないか。音楽性はやや違うが。一曲目の「ホット・ス タッフ」のギターのカッティングにまず度肝を抜かれ、隠れた名曲「メモリー・モーテ ル」に聞き惚れる。B面頭の「ヘイ・ネグリータ」に圧倒され、ラストの割とオーソド ックスな「クレイジー・ママ」でストーンズらしく締める。全編に漂うファンキーな香り に僕は完全にノックアウトされてしまったのだった。しかし、今聴いてみるとやはり ストーンズのアルバムとしてはやや異質な部類かもしれない、という気はする。少 し洗練された感じがするせいだろうか。しかし、名盤には違いない。 |
![]() | ウェストコーストの歌姫、リンダ・ロンシュタットがカントリー一本槍から脱皮した印 象を与えたのが、このアルバムではないか、という気がする。確かに、既に「悪い あなた」という全米Y1ヒットを出してはいたが、ここではこれまでになかった人の 作品を取り上げ、シンガーとしての領域を拡げているように思う。とはいえ、ウォー レン・ジボンやカーラ・ボノフ(リンダが曲を取り上げたことで有名になった)といっ た人達の曲に混じって、「ザットル・ビー・ザ・デイ」をめちゃくちゃカッコ良く聴かせ るあたりがリンダらしい。この人のアルバムは、いつも選曲がカギになるように思 う。もともとうまい人だけに、いい曲さえ揃えれば出来はいい物になる。そういう意 味では、文句なし。名曲揃いでリンダのベスト作。 |
![]() | 超絶技巧集団ラッシュの、プログレハードロックトリオとしては最後のスタジオ録音 盤。前作あたりから大作志向が薄れ、コンパクトにまとめた曲が多くなってきたが それでもそのテクニックは変わらない。だいたいニール・パートとかは人間じゃな い、と思う。「トム・ソーヤー」とかを聴いてみれば分かるが、とにかく並ではない。 他の2人も当然テクニシャンで、このアルバムの「YYZ」みたいな曲までライブで易 々とやってしまうのだから恐れ入る。音楽的にも、大衆に迎合しない、大人しく聴く ことを要求しているような感じで、思わずひれ伏してしまう。こんなアルバムが売れ たのだから、やはりいい時代だったのか。また、ラッシュの場合、出来やしないの に何故かコピーしたくなるのである。何か刺激されるものがあるのだろうか。 |