私選名盤100選

021〜030


021  ALONG THE RED LEDGE
     /DARYL HALL & JOHN OATES
       赤い断層/ダリル・ホール&ジョン・オーツ(1978)
ALONG THE RED LEDGE
80年代に大ヒット連発で、一世を風靡したホール&オーツだが、僕はやはり70
年代の彼らの方が好きだ。ブルー・アイド・ソウル(死語だね)と呼ばれた彼らの
サウンドは、僕の印象ではそれほど黒っぽくなく、けど他とは違ってオシャレでカ
ッコよかったと思う。で、このアルバムはプロデューサーにデビッド・フォスターを迎
え、A面では正にホール&オーツ節といったサウンドを聴かせ(「イッツ・ア・ラーフ
」名曲!)、B面では一転してロックンロール大会という構成になっている。問題は
そのB面で色々物議をかもしたが、そのおかげでこのアルバムは彼らのキャリア
の中でも個性的な一枚になっているのではないか。誰も名盤とは言わないが。こ
の頃からアルバム毎にプロデューサーを変え、彼らは試行錯誤の時期に入る。


022  ULULU/JESSE ED DAVIS
       ウルル/ジェシ・デイビス(1971)
ULULU
恥ずかしながら、このアルバムの存在をつい最近まで知らなかった。出てから30
年近く経っているというのに。ジェシ・デイビスはジョージ・ハリスンのアルバムでギ
ターを弾いたりしてたから、名前は知ってたが、ソロアルバムのことなど気にした
事すらなかったのだ。もっとも、アメリカ南部にどっぷり浸かったこの音楽を中学
生の頃とかに聴いてたとしても、その良さが分かったかどうか。ま、しかしこれは
アメリカンロックの隠れた名盤と言っていいだろう。ジェシのボーカルも上手くない
けどいいし、なんたってギターが素晴らしい。意外なのは、曲の出来がいい事で、
ジェシがソングライターとしても優秀であることを証明した。残念ながらジェシは
10年程前に亡くなってしまったが、その音楽は不滅だ。


023  DEEP PURPLE LIVE IN JAPAN
       ライブ・イン・ジャパン/デイープ・パープル(1972)
DEEP PURPLE LIVE IN JAPAN
僕がバンド、それもドラムをやりたいと思ったきっかけはこのアルバムだった。僕
だけではない、周りにもパープルを聴いて楽器を始めた者が大勢いた。70年代
半ばに10代だった者へのディープ・パープルの影響は絶大なものがある。一世
代前ならベンチャーズ、後ならBOφWYってとこか。そんな思い入れを抜きにし
ても、このアルバムは今聴いてもすさまじい。バンドが絶頂期だった時のテンショ
ンがダイレクトに伝わってくる。頭の「ハイウェイ・スター」からもう既にエンジン全
開だ。「ミュール」のドラムソロ、「レイジー」のインタープレイ等々聴きものも多い。
ガキ向けのバンドみたいに言われてたけど、どうしてどうして技術レベルも高い。
絶好調リッチーも凄いし、臨場感たっぷりのライブ盤の大傑作だ。


024  HYSTERIA/DEF LEPPARD
       ヒステリア/デフ・レパード(1987)
HYSTERIA
このアルバムはNWOBHMのひとつの到達点として評価されるべき名盤である。
一部では呪われたバンドとまで言われたデフ・レパードは、メンバーチェンジやド
ラムのリック・アレンが事故で片腕を失う、などの試練を乗り越え、このアルバム
を完成させた。よく練られた楽曲に様々なアイデアが取り込まれ、ハードロックに
は勿体ないくらいのスケールの大きさを感じさせる。ネオハードロック、というか、
先端のテクノロジーも取り入れ、デフ・レパードならではの新型ハードロックがここ
ではたっぷり楽しめる。なんだか文章が伊藤政則風になってきたが、まあそれだ
け素晴らしいアルバムであることは間違いない。7曲もシングルカットされ、チャー
トを賑わしたのもすごいことだ。


025  TAKIN’ IT TO THE STREETS
     /THE DOOBIE BROTHERS
       ドゥービー・ストリート/ドゥービー・ブラザーズ(1976)
TAKIN’IT TO THE STREETS
バンドの前期と後期とで、まるっきり違うバンドのようになってしまったドゥービーだ
が、このアルバムは丁度過渡期に当たるものである。つまり、トム・ジョンストン時
代の豪快路線とマイケル・マクドナルド時代のAOR路線の両方の要素がこのア
ルバムには同居している訳だ。従って、どちらのドゥービーにも思い入れのない僕
のような者には、一番好きなのはこのアルバムということになる。しかし、両方の
要素が実にバランスがとれていて、聴きごたえがある。ギター中心の「運命の轍」
や「リオ(名曲!)」はあくまでカッコ良く、マクドナルドの曲はあくまでオシャレにポ
イントはちゃんと押さえてる。しかも、「イット・キープス・ユー・ランニン」みたいにリ
ズムボックスをベースに進行する曲まであって、結構盛り沢山なのだ。


026  RIO/DURAN DURAN
       リオ/デュラン・デュラン(1982)
RIO
本作は、やや退廃的なボーカル、デジタルなビートにファンキーなベース、といっ
た初期デュラン・デュランの特徴が一番良く出ていると思う。彼らもまた、ニューロ
ンティックの第一人者として(何せ「プラネット・アース」の歌詞にニュー・ロマンティ
ックという言葉が使われているくらいだ)、そのイメージを損なわない曲作りとビテ
オクリップで楽しませてくれた。分裂して3人組になって以降はつまらない、などと
言う気は全然ないが、この時期の妖しげなデュラン・デュランが僕はやっぱり好き
である。彼らは、そのイメージの割には曲作りに長けていて、このアルバムもシン
グル曲はもちろん、「ニュー・レリジョン(名曲!)」「ホールド・バック・ザ・レイン」な
どにもその能力が遺憾なく発揮されている。


027  ONE OF THESE NIGHTS/EAGLES
       呪われた夜/イーグルス(1975)
ONE OF THESE NIGHTS
『ホテル・カリフォルニア』でウェストコーストどころか、全米を背負って立つバンド
になってしまった(結局、解散の原因はそこにあるのでは)イーグルスであるが、
このアルバムも全米でトップに立ち、この時点でアメリカのトップバンドになってい
た。このアルバムの良さは『ホテル〜』で失われてしまったカントリーフレイバーが
まだ残っていることで、『ホテル〜』に通じる黒っぽい曲(ソウルフルという意味で
はなく、暗いイメージの曲ということ)と、いかにもウェストコーストな曲とがバランス
良く配置され、正に過渡期という印象。ギターバンドとしてのイーグルスも堪能でき
る中身の濃い一枚だ。所で、イーグルスには5曲の全米No.1ヒットがあるが、一
位獲得週数はトータルで5週にしかならない。これは珍しい記録では。


028  THE LANGUAGE OF LIFE/EVERYTHING BUT THE GIRL
       ランゲージ・オブ・ライフ/エブリシング・バット・ザ・ガール(1990)
THE LANGUAGE OF LIFE
このアルバムを聴いてみようと思ったのは、某雑誌に「このアルバムの良さが分
からない人は、ポップスを聴くのをやめた方がいい」と書いてあったからだ。で、
聴いてみたらこれが仲々良い。すっかり愛聴盤になってしまった。このEBTGは
ベン・ワットとトレイシー・ソーンの夫婦ユニットで、ボサノバをベースにした音楽で
80年代から活動していたらしい。このアルバムは、彼らの念願であったトミー・リ
ピューマのプロデュースによるもので、ジャズ畑のミュージシャンをバックにメロウ
な大人のポップスが展開される。腕利きたちが目立つプレイはせずバッキングに
徹し、ベンとトレイシーも音より歌に比重を置いたアルバム作りをしているのが、
成功の原因だろう。派手さはないが、深い後味が残る好盤。


029  FLEETWOOD MAC
       ファンタスティック・マック/フリートウッド・マック(1975)
FLEETWOOD MAC
マックといえば『噂』なのだが、一大ベストセラーになったことで、やや過大評価気
味の『噂』より、初めて全米を制したこちらの方が佳曲が多いと思う。御存知、バ
ッキンガム・ニックスの2人が参加しての初めてのアルバムだが、この2人早くも
バンドを自分達のカラーに変えてしまっている。ここにクリスティン・マクヴィーを加
えた3者3様の個性をベテランのリズム隊が武骨に支える、というマックサウンド
の基礎が既に完成されているのだ。次作『噂』はこのパターンを忠実に踏襲した
ものだ。曲も「マンディ・モーニング」「セイ・ユー・ラブ・ミー」「ワールド・ターニング」
あたりがお薦め。ブルースバンド時代と比べれば、確かにポップになったが、決し
て軽くはなく、ロックバンドのダイナミズムもしっかり残っている。


030  DOUBLE VISION/FOREIGNER
       ダブル・ビジョン/フォリナー(1978)
DOUBLE VISION
何を隠そう僕が初めてロックのコンサートを見たのが、このフォリナーだった。思
い起こせば1978年4月4日のこと、地理も何も分からず東京駅から日本武道館
まで歩いて行ったものだ。フォリナーもその時が初来日でかなり真面目に演奏し
てたように思うし、僕も初のロックバンドですっかり感動して帰ってきたことを覚え
ている。その来日公演からほどなくして発売されたこのアルバムを僕は毎日のよ
うに聴いていた。そういった思い入れのせいばかりではないと思うが、フォリナー
が70年代に出した3枚のアルバムはどれも出来がいい。曲が良いことが、この
バンドの最大の魅力であり、この時期のアルバムはその魅力がフルに発揮され
ている。一枚、ということでこのアルバムを選んだが、いずれも甲乙付け難い。


前の10枚      次の10枚


「私選名盤100選」トップへ戻る