みんなの名盤

投稿No.104 イアラさんの

ロックの道は1日にしてならずぢゃ
−1982年編−


1982年

この年に中学生になったイアラ少年はいよいよリアルタイムの音楽にも手を出すようになります。
友人に借りたビリー・ジョエルの「ニューヨーク52番街」が最初でした。
ビートルズの仲間だという間違った知識を植え付けられたのと、そのキャッチーなサウンドは、たちまちイアラ少年を虜にしました。この年の暮れぐらいには「ストレンジャー」「ナイロン・カーテン」と聴いていくことになります。
次に手を出したのが兄がレコードを買ってきたスティクスの「パラダイス・シアター」とジャーニーの「エスケイプ」でした。しかし、当初はビートルズともビリー・ジョエルとも違う音楽性は少年には当初全く受け入れられず、お気に入りになるにはもう少し時間がかかります。
この時同じクラスだった友人「I」にセックス・ピストルズ「勝手にしやがれ」、ドアーズ「ハートに火をつけて」、キング・クリムゾン「クリムゾン・キングの宮殿」、ボブ・ディラン「ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム」などをたて続けに聴かされて衝撃を受けます。ピストルズだけはすぐに馴染めなかったかな。(笑)
この「I」という友人は私の洋楽人生に於いて計り知れない影響を与えてくれました。
そして自分でラジオを聴いていて気に入った第1号のアーティスト、デュラン・デュランと出逢います。
ちょうど「第2次ブリティッシュ・インベイジョン」が始まった頃でしょうか。
ラジオでアルバム「リオ」の収録曲がガンガンかかってました。
こうして少年のリアルタイム元年は幕を閉じます。

前年アメリカで音楽専門のケーブルTV局MTVが開局、楽曲の新しいプロモーションの手段としてミュージック・ビデオが登場する。ミュージック・ビデオを使えば地道なライヴ活動を行わなくとも全米規模でのプロモーションが可能であり、とにかく目立つビデオ作品を作れば一気に認知度を高めることができた。その手法によりイギリスのアーティストが3年ほどに渡ってアメリカのチャートを席巻した。これを「第2次ブリティッシュ・インベイジョン」という。
そしてそのブームは世界中に広まった。

ビートルズやローリング・ストーンズなどイギリスのアーティストがアメリカで旋風を巻き起こしたのを第1次ブリティッシュ・インベイジョンとしたのをなぞらえて、80年代では第2次ブリティッシュ・インベイジョンという。
主なアーティストはデュラン・デュラン、カルチャー・クラブを筆頭にワム!、スパンダー・バレエ、カジャグーグー、ユーリズミックス、ヒューマン・リーグ、ハワード・ジョーンズあたりで、あとアイルランド出身ながらU2らの名前が挙げられる。それとベテランだがデヴィッド・ボウイがこの波に乗り再びアメリカで成功を収めている。
主にニューロマンティクス系と分類されるアーティストが多く、どちらかというと音楽性よりもビジュアル面で人気を得た。
軽くポップで親しみやすい音楽性、趣向を凝らしたミュージック・ビデオ、最新のファッションなどは長髪でむさ苦しいロック・ミュージシャン、ワンパターンのディスコ・サウンドに飽きたアメリカの若者の心を掴んだ。

MTVの出現は少なくともアメリカではポピュラー音楽のプロモーションにとって大きな意義を持ち、イギリスやオーストラリアなど国外のアーティストが進出するきっかけを作り、第2次ブリティッシュ・インベイジョンを引き起こした。
それまで必ずしも一般的でなかったプロモーション・ビデオ(PV)の製作が一般的になったのはMTVの出現後だし、ビデオ・クリップという言葉が一般化したのもMTV以降である。
そしてこの年の暮れにMTV効果なしでの大ヒットはあり得なかったあのアルバムが登場する・・・。

この年の年間ランキングではシングルがオリヴィア・ニュートン・ジョンの「フィジカル」が、アルバムがエイジアの
「詠時感〜時へのロマン」がそれぞれ首位を獲得。
主なヒット曲、アルバムは次の通り。

シングル
フィジカル/オリヴィア・ニュートンジョン 1位 (81年で抜けてました) 他にムーブ・オン・ミー 5位
アイ・オブ・ザ・タイガー/サバイバー 1位
アイ・ラブ・ロックン・ロール/ジョーン・ジェット&ザ・ブラ
ックハーツ 1位 他にクリムゾンとクローバー 7位
エボニー&アイボリー/ポール・マッカートニー&スティーヴィー・ワンダー 1位
堕ちた天使/Jガイルズ・バンド 1位 他にフリーズ・フレイム 4位
愛の残り火/ヒューマン・リーグ 1位
ジャック・アンド・ダイアン/ジョン・クーガー 1位 他に青春の傷あと 2位
アブラカダブラ/スティーヴ・ミラー・バンド 1位
素直になれなくて/シカゴ 1位
炎のランナー/ヴァンゲリス 1位
ロザーナ/TOTO 2位
アイ・キャント・ゴー・フォー・ザット/ダリル・ホール&ジョン・オーツ 1位(81年) 他にディド・イット・イン・ア・ミニット 9位
ガール・ライク・ユー/フォリナー 2位
ノックは夜中に/メン・アット・ワーク 1位
翼を広げて/ジャーニー 2位 他に愛に狂って 9位

アルバム
詠時感〜時へのロマン/エイジア 1位
ビューティ&ザ・ビート/ゴー・ゴーズ 1位
アメリカン・フール/ジョン・クーガー 1位
フリーズ・フレイム/Jガイルズ・バンド 1位
ゲット・ラッキー/ラヴァーボーイ 7位
炎のランナー/サウンドトラック 1位
アバカブ/ジェネシス 7位
プライベート・アイズ/ダリル・ホール&ジョン・オーツ 5位
ミラージュ/フリートウッド・マック 1位
タッグ・オブ・ウォー/ポール・マッカートニー 1位
ラブ・アクション/ヒューマン・リーグ 3位
聖なる剣/TOTOIV...TOTO 4位
アイ・ラブ・ロックン・ロール/ジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツ 2位
と、まぁ、こんなところにしておきましょう。

さて、オーナーさんの10選との比較ですが、「ミラージュ」「リオ」「聖なる剣」の3枚が一致。
「プリテンダーズ II」「ホット・スペース」「ジャンプ・アップ」「スリー・サイド・ライブ」「マシーナリー」の5枚は私も持っていて愛聴盤であります。
シーナ・イーストンは私も大好きでアナログは全部持ってたりするんですが、アルバム・アーティストとしてはちぃとインパクト弱いかなって気がします。CMに使われた曲が多くシングル曲はいい曲ばかりですよね。
80年代のエルトンも同様で、シングル曲はいい曲が多いけどアルバムはやはり弱いかな、と。駄作とまでは言いませんが・・・。
クイーンは一層のファン離れを引き起こしたとされる問題作ですね。個人的にはオーナーさん同様傑作なんですが。
で、残る2枚は未聴です。ABCもシングル曲を知っている程度でアルバムは聴いてなかったりします。(苦笑)
次回も楽しみにしましょう。


1. Mirage/Fleetwood Mac
http://www.hmv.co.jp/product/detail/6710
メンバーのソロ活動を挟んで発表された後だけにグループとしてのまとまりも見事。音楽誌などでの評価は低いけどイイものはイイ。US1位(5週)

2. Rio/Duran Duran
http://www.hmv.co.jp/product/detail/95171
アメリカで第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンの中心的存在だったデュランの2nd。このアルバムがきっかけでリアル・タイムの音楽もよく聴くようになったなぁ。UK2位、US6位

3. Asia/詠時感〜時へのロマン...Asia
http://www.hmv.co.jp/product/detail/165803
プログレの大物バンドに在籍したメンバーで結成されたスーパー・グループのデビュー盤。そのサウンドは意外にもポップだが世界中で売れに売れた。US1位(9週)

4. Business As Usual/ワーク・ソングス...Men At Work
http://www.hmv.co.jp/product/detail/717691
MTV効果でメジャーになったオーストラリア出身のバンドのデビュー作。「ノックは夜中に」のサックスが印象的だったなぁ。US1位(15週)

5. Blackout/蠍魔宮〜ブラックアウト...Scorpions
http://www.hmv.co.jp/product/detail/48688
アメリカで初のトップ10入りとなった記念碑的作品。ジャケも発禁継続中。(笑) US10位

6. TOTO IV/聖なる剣...TOTO
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1435171
グラミー賞7部門受賞のグループ史上最高のヒット作。美しいロックン・ロールに陶酔・・・。US4位

7. The Number Of The Beast/魔力の刻印...Iron Maiden
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1257196
666は悪魔の数字。ヴォーカルがブルース・ディッキンソンに交代して新たな方向性を示唆した3rdアルパム。US33位

8. Tug Of War/Paul McCartney
http://www.hmv.co.jp/product/detail/13879
プロデューサーにジョージ・マーティンを迎え、ジョンの死を乗り越えて作った大ヒット作。製作中にウイングス自然消滅はちぃと残念。US1位(3週)

9. American Fool/John Cougar
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1090773
アメリカンな匂いプンプンの正統派ロックン・ロール。シンプルだがカッコイイ。US1位(9週)

10.  Speak Of The Devil/悪魔の囁き...Ozzy Osbourne
http://www.hmv.co.jp/product/detail/63896
ランディ・ローズ追悼盤で当時は2枚組だったライヴ盤。新ギタリスト、ブラッド・ギルスを迎え全編サバス時代の楽曲だけで構成された反則盤でもある。US14位


オマケ・シングル10選

1. Gypsy/愛のジプシー...Fleetwood Mac

http://www.youtube.com/watch?v=wEcByLWMNEs

2. Edge Of Seventeen/Stevie Nicks
http://www.youtube.com/watch?v=UOTYDv5-Kvg

3. I've Never Been To Me/愛はかげろうのように...Charlene
http://www.youtube.com/watch?v=r-vx4GcjASE

4. Waiting On A Friend/友を待つ...The Rolling Stones
http://www.youtube.com/watch?v=sfNXd67beNE

5. Hard To Say I'm Sorry/素直になれなくて...Chicago
http://www.youtube.com/watch?v=Yh9cNYlmXEY

6. I Love Rock'N Roll/Joan Jett & The Blackhearts
http://www.youtube.com/watch?v=M3T_xeoGES8

7. Open Arms/翼を広げて...Journey
http://www.youtube.com/watch?v=kTMzPpwc36M

8. Rosanna/TOTO
http://www.youtube.com/watch?v=Gq4ychrRkQA

9. Evony & Ivory/Paul McCartney & Stevie Wonder
http://www.youtube.com/watch?v=TZtiJN6yiik

10. Who Can It Be Now/ノックは夜中に...Men At Work
http://www.youtube.com/watch?v=YbZ9xUF7sY8

オマケ2・主なヒット曲PV

フィジカル/オリヴィア・ニュートンジョン

http://www.youtube.com/watch?v=VQXECBdPgEA

アイ・オブ・ザ・タイガー/サバイバー
http://www.youtube.com/watch?v=LrOawFUdFfU

堕ちた天使/Jガイルズ・バンド 
http://www.youtube.com/watch?v=Wx6t11D99tA

愛の残り火/ヒューマン・リーグ 
http://www.youtube.com/watch?v=arUqoKjU3D4

ジャック・アンド・ダイアン/ジョン・クーガー 
http://www.youtube.com/watch?v=QT9tpKXFd8A

アブラカダブラ/スティーヴ・ミラー・バンド 
http://www.youtube.com/watch?v=cyrcN7IwmI0

炎のランナー/ヴァンゲリス 
http://www.youtube.com/watch?v=TYJzcUvS_NU

アイ・キャント・ゴー・フォー・ザット/ダリル・ホール&ジョン・オーツ 
http://www.youtube.com/watch?v=lEZZK5Wvnbk

ガール・ライク・ユー/フォリナー 
http://www.youtube.com/watch?v=AlkffbLfMoQ

注) 81年末にヒットしたものも含まれています。



MFCオーナーの感想
イアラさん、毎度ありがとうございます。いよいよ、1982年にやってきました。
この年のエポックは、なんと言ってもプロモーション・ビデオの登場でしょうか。今となっては、いつ頃からプロモーション・ビデオが出回り始めたのか、よく覚えていないのですが^^;、『ベスト・ヒットUSA』がこの年に始まったような気もする(自信なし^^;)ので、1982年を一応“日本における一般的なプロモーション・ビデオ元年”としておきましょうか(笑)

個人的な話をすると、1982年は一年間の(暗い)浪人生活を経て、大学に入学した年であります。入った大学が自宅から通うには遠かったので、大学の敷地内にある学生寮に入寮し、一部屋に二人で寝起きする生活をしてました。同室の青森出身の川口君(実名出すなよ)がバンドマンで、夜な夜なロックの話で盛り上がったのを覚えています(笑) 案外と、寮には洋楽好きが多く、テレビのある部屋に行って『ベスト・ヒットUSA』を皆で見て騒いだりなんかして(笑)、楽しく過ごした時期でしたね。音楽系サークルに入ったりもして、少しづつ音楽の趣味も変わってきました。ハードロック離れも徐々に回復してたりして(笑) 僕にとっての、本当の80年代は、この年から始まったかもしれません。

ま、そういう頃ですから、やはり当時のヒット曲と記憶が密接に結びついたりしてる訳でして、この年はアルバム以上に、印象的なヒット曲が多いです。前年からのロングヒット傾向がこの年も続いていたように思うのは、僕だけでしょうか? 10連続の「フィジカル」の後、「堕ちた天使」「アイ・ラブ・ロックンロール」「エボニー・アンド・アイボリー」「アイ・オブ・ザ・タイガー」あたりは、いずれも6〜7週間首位をキープしていたと記憶してます。他のNo.1ヒット、例えば「愛の残り火」「ジャック・アンド・ダイアン」なども4週くらい首位だったと思うのですが、それらが霞むくらい特大ヒットが多かった年でした。イアラさんがYouTubeを貼り付けて下さったので、懐かしい映像(初めて見たのもありました)をあれこれ見る事が出来た訳ですが、大ヒットだけど、そんなに良い曲かねぇ、なんてのもありますね(爆) どれとは言いませんが(爆)

この年は、プロモーション・ビデオが登場して、それまでの“ラジオからヒット曲が生まれる”という図式が変わり始めた年なんですが、当時から思ってましたが、曲は大した事なくても、ビデオが面白いとヒットしてしまう、という弊害が出始めましたよね。また深夜だけでなく、フツーの時間帯にも洋楽のプロモーション・ビデオが流れるようになって、洋楽好きでなくても、流行りの曲やアーティストは知ってる、なんて状況にもなり、アメリカのヒット曲を聴いてる(知ってる)、というのは一種のトレンドでもありました。前述の学生寮に於いてもそうですが、あの頃(80年代後半になるまで)は、周囲と洋楽の話をするのは、大して難しい事ではなかったです。皆さん、フォリナーだって、ちゃんと知ってましたから(笑) 貸しレコード屋が一般化し、ヒット・アルバムをすんなり聴けるようになったのも影響大でしょう。僕も、その恩恵に預かった一人です(笑)

つー訳で、肝心のアルバム10選に触れてませんが(笑)、

『ミラージュ』
フリートウッド・マック久々の新作という事で、かなり話題が先行してました。聴いてみたら、案外とイージーな作りで、やや拍子抜けしましたけどね^^; 好きですけど(笑) 「愛のジプシー」もいいですが、「ホールド・ミー」も捨てがたいです。
『リオ』
これは正に、ニュー・ロマンティックを、いや80’sブリティッシュ・ポップを代表する名盤でしょう。いやいや、よく聴いたものです。ちなみに、デュラン・デュラン、ABC、マドンナ、シンプリー・レッド、デフ・レパードは、僕にとっての“80’s5大収穫”だったりします(笑)
『詠時感〜時へのロマン』
これはヒットしてましたけど、個人的には好きではありませんでした。今聴くと、割にいいと思いますけどね。軽過ぎる気がしたのでしょうか。スティーブ・ハウ、カール・パーマーと、あまり好きでない人がメンバーにいたのも影響してたりして(笑)
『ワーク・ソングス』
実はこれ、出てすぐ買ったのです。当時ヒットしていた「ノックは夜中に」が好きだったものですから。けど、アルバムは2〜3回聴いてそれきりです。趣味じゃなかったのですね^^;
『蠍魔宮〜ブラックアウト』
未聴です。タイトル曲しか知りません^^;
『TOTOW〜聖なる剣』
これはよく聴きましたね。出てすぐ買いました。2000円だったし(笑) TOTOの最高傑作とは思いませんが、代表作なのは間違いないです。B面が好きですね。全米No.1になった「アフリカ」は耳タコのはずなんですが、今でも好きな曲です。
『魔力の刻印』
すいません、これも未聴です^^;
『タッグ・オブ・ウォー』
FMでよく流れてました。持ってないけど、ほとんどの曲を知ってました(笑) 個人的には「エボニー・アンド・アイボリー」より、第二弾シングルの「テイク・イット・アウェイ」の方が好きでした。久々のジョージ・マーティンのプロデュースですが、最初、ポールが持ってきたデモ・テープを聴いて、半数の曲をボツにしたそうです。さすが、ポールにここまで言えるのはジョージ・マーティンだけだったんですね(笑)
『アメリカン・フール』
2〜3年前からヒットを出してたけど、ジョン・クーガーはついにこのアルバムでブレイクしましたね。ファンではないですが、なんとなく嬉しかったです(笑)
『悪魔の囁き』
今に至るまで未聴です^^;

相変わらず、メタル系は一致しませんね(爆) あ、それと、80年代のエルトンも、アルバムは力作が多いですよ。作品によって差がありますけど(笑) この時代は、一枚のアルバムからのシングル・カットが増えたのと、プロモーション・ビデオのせいで、シングルに強い印象を持っている人が多いです。ベスト盤から入った人が、オリジナル・アルバムを聴くと今イチ、なんて感じるケースも結構あるようですね。シングルをカットし続けて、結果的にアルバム・セールスを伸ばす、という商売が定着したのも良くなかったんじゃないでしょうか(笑)

ま、これに懲りず、次回もよろしくお願いします^^


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