みんなの名盤

投稿No.100 fxhud402さんの

続・ Youtube( とか) で見つけてうれしかったもの番外編
MIC( 国際映画社) 伝説


……というわけで(どういうわけだ)第二弾である。おっかなびっくり?投稿した前回のナック編が予想外にウケてしまったので、すぐに図に乗る僕は、いそいそと次なる古アニメ企画を考えてみるのだった。

とはいえ今回のターゲットである、MICこと国際映画社(Movie International Co.Ltd.)は、前回のナック以上にリスキーな題材である。活動した期間が70年代の末から80年代の半ばの、たった約6年間ほどしかない。ここに集まっている人たちに「見たことある?」と聞くこと自体がどだい無茶なのだ。しかし、その頃はちょうど最初のアニメバブルが最高潮に達し、崩壊していった時期であり、会社そのものがそんな時代の仇花的なところがあるのだ。そういう目で見ると結構面白い会社である。

1974年、国際映画社は日活の重役だった壺田重三によって洋画の配給会社としてスタートした。そして1978年、重三の長男である重夫をプロデューサーに立ててアニメの制作に乗り出すことになる。

しかし、自前でアニメを製作するスタッフを国際映画社は抱えておらず、実際の製作は国内外(特に海外)のスタジオに外注、自分たちは企画とマネージメントに専念していた。だからというわけではないだろうが、ここの作品はたとえ企画に光るものがあっても、アニメそのものが低予算・低品質で、結局視聴率が取れずに打ち切りとなる作品がいくつもあったのである。わずか6年で倒産ということになったのも当然といえば当然。というわけで、今回Youtubeではすべての作品の映像を揃えられなかったことをおことわりしておきたい。

「くじらのホセフィーナ」(1979)
記念すべき最初の作品。映画「汚れなき悪戯(名曲「マルセリーノの歌」でおなじみ)」の原作者として知られるスペインの作家、ホセ・マリア・サンチェス=シルバの児童向け小説「さよならホセフィーナ」のアニメ化…今ではテレビで見なくなった、いわゆる「名作もの」である。なお、本作を含め最初期の数作は、同じ中堅制作会社である葦(あし)プロとの共同制作であり、同社のサイトに紹介ページがある。
http://www.pro-reed.com/works/tv_series/w004.html
こちらは同時に発売された書籍版の紹介。
http://akimog.hp.infoseek.co.jp/comics/josefina.html
これよりも昔に学研からも日本語版が出ていたらしく、それを見て育った人には当然、このアニメ絵には抵抗があったようだ。だからかヒットにはならず、最初の放送では最後の2話を残して放送を打ち切られた。そして現在では、全26話中約半分のフィルムが散逸してしまっているという。

「ずっこけナイト ドンデラマンチャ」(1980)
http://jp.youtube.com/watch?v=2o5UVn4S54Y
http://jp.youtube.com/watch?v=v_8EcmopK4A
前回のスーキャットの紹介をしたときに取り上げたアニメ年鑑でぼろくそに酷評されていた作品。この時点ですでに、国際映画社のクオリティの低さは定説になっていたようだ。しかしドン・キホーテを題材にしていることも含め、最初から日本で受けようとは思っていなかったのかもしれない。これも葦プロのサイトで紹介されている。
http://www.pro-reed.com/works/tv_series/w006.html

「宇宙戦士バルディオス」(1980〜81)
http://jp.youtube.com/watch?v=73EwnRGy0T0
http://jp.youtube.com/watch?v=P9JmavsvyWg
初のロボットアニメ。これは見たことがあるが、やはり途中で打ち切られてしまったと思う。なお、今回のロボットアニメの映像においては、いくつか他の作品と一緒になっているものから選ばせてもらいました。題材の作品が何番目に入っているかは詳細を見て確認してください。これも葦プロのサイトで紹介されています。
http://www.pro-reed.com/works/tv_series/w007.html

「ふたごのモンチッチ」(1980)
これも見てはいないけど、当事アニメになっていたことは覚えている。このアニメ絵のモンチッチはキャラクター商品でよく見た。葦プロとの最後の共同制作で、サイトに紹介がある。
http://www.pro-reed.com/works/tv_series/w005.html
そしてこれは主題歌のシングル盤の紹介。
http://f1.aaa.livedoor.jp/~saimas/Rc/R1980.html
アニメのシングルなのにジャケは実写。でもそれより、その下に紹介されているレコードの顔ぶれに衝撃を受けるのは僕だけだろうか?人に歴史ありだよなぁ。

「めちゃっこドタコン」(1981)
http://jp.youtube.com/watch?v=ZQ8S3QcWBwY
すでに原作の漫画がヒットしていた「Dr.スランプ」の人気を当て込んだ、ご町内お騒がせロボットアニメ。しかし、アメリカンに垢抜けた鳥山ワールドに対して、ド根性ガエルのゴリライモもかくやという、泥臭い下町蛮カラワールドが運命を決めてしまった。そして、この頃を最後にこういう世界観のアニメはテレビから姿を消したと思う。

「若草の四姉妹」(1981)
http://jp.youtube.com/watch?v=7etGPLVeBms
http://jp.youtube.com/watch?v=cEcXPLfCOJE
オルコットの若草物語のアニメ化。確か放送が始まるという記事を雑誌で読んだ気がするが、地元には民放が二つしかなかったので、見ようにも見られなかった。後に、この分野の老舗である日本アニメーションが「愛の若草物語」としてアニメ化したことで、「四姉妹」は存在自体が埋もれてしまった。そして今では、「名作アニメ」というジャンル自体が死語になっている。

「銀河旋風ブライガー」(1981〜82)
http://jp.youtube.com/watch?v=-dKoz7XCiEQ
http://jp.youtube.com/watch?v=XquojT-q7Q8
http://jp.youtube.com/watch?v=az7wKk-xjxI
今まで何度も、この会社はいわゆるB級作品の会社であることを僕は強調してきた。が、アニメファンの間での国際映画社の評価は、前回取り上げたナックよりも確実に高い。それはひとえに本作に始まるJ9シリーズ3作を世に問うたからに他ならない。といっても僕も今回初めて動画を見たのだけど。3作とも一貫して「必殺仕事人」シリーズを下敷きにしていて、オープニングで流れる柴田秀勝(「ダウンタウンのガキやあらへんで!!」で時々ナレーションしてる人)のハイテンションな口上が、いやがうえにも気分を盛り上げる。

「ハニーハニーのすてきな冒険」(1981〜82)
http://jp.youtube.com/watch?v=xPOEr6gPU68
これもまったく知らなかった。「キャンディ・キャンディ」の作者として知られる、水野英子作のメルヘン冒険漫画のアニメ化。

「魔境伝説アクロバンチ」(1982)
http://jp.youtube.com/watch?v=EbxUQSVCZUU
以前から名前だけは聞いていたタイトル。どうも当時のスポンサーが、あの暗がりで見かけると怖い自販機でおなじみ?のガチャガチャ業者コスモスだったらしい。コスモスのCMはよく覚えている。あれも不気味だったな〜。その後、例の偽ビックリマン事件を起こして倒産する訳だけど...。

「おちゃめ神物語コロコロポロン」(1982〜83)
http://jp.youtube.com/watch?v=4RJykSo7b9g
http://jp.youtube.com/watch?v=AY4NQkP-Gkw
これもキャラクターもののおもちゃのCMだけが地元では流れていた。東京ではこういうのもやってるんだろうなぁ、と思ったもんである。ギリシャ神話をネタにしたギャグもので、やはりこれも海外受けを狙ったものなのかも。

「銀河烈風バクシンガー」(1982〜83)
http://jp.youtube.com/watch?v=QgDjtlvnmVQ
http://jp.youtube.com/watch?v=aYSyTctc9r4
J9シリーズ第二弾。現場が乗って作っている感じが画面から伝わってくる。こういうのをいいアニメというのだ。

「愛の奇跡 ドクター・ノーマン物語」(1982)
クリスマス・イブ特番用に作られた単発作品。キリスト風ルックスの医者が、身を挺して村を難病から救うお話だという。
国際全盛期の作品にもかかわらず、これだけはほんとうに情報がなかった。わずかにヤフオクにシングルの出品があったくらい。でももう消えてしまっているかもしれない。
http://page16.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/u24079070
もうひとつは、サントラを担当したジャズ・バンドのギタリストのページに、サントラの画像があっただけだ。
http://area52.lalalu.com/tn/sakuhin/ucps.html

「亜空大作戦スラングル」(1983〜84)
http://jp.youtube.com/watch?v=tFKvNkCYL7w
http://jp.youtube.com/watch?v=pfdkUMy3kA4
実を言うと、今回の投稿はこの作品を紹介するのが目的だった。この作品は間違いなく当事見ている。J9が必殺仕事人ならこちらはスパイ大作戦。キャラクターはジェットとかチャンスとか、一昔前のゴルファーみたいなあだ名で呼び合っている。このいなせな乗りが国際全盛期の証なのだろう。

しかし、なんといってもこのテーマ曲だ。「タイムボカン」の、いや「燃えよドラゴンズ」の山本正之がこうもロイクな音楽に傾倒していたなんて信じられない!放送後期はテーマが新田一郎の曲に変わるのだが、こっちのほうが断然エグい。そして、この番組でこの種の音楽の洗礼を受けた人も少なくないようで、当然?こんな動画もアップされている。
http://jp.youtube.com/watch?v=f3VSd5omXrg
思えば、当時はこの「ゴリラ!」の連呼に付いていけず、この作品がアニメから気持ちが離れていくきっかけになったのだった。それがこんな凄い曲だったなんて…!

「ななこSOS」(1983)
http://jp.youtube.com/watch?v=D9pNHtAAEVM
これも見たことがあったはず。テーマ曲は明確に覚えている。でもななこってアンドロイドだったのか。

「銀河疾風サスライガー」(1983〜84)
http://jp.youtube.com/watch?v=UJnjsmLCvr4
http://jp.youtube.com/watch?v=qR6kpsUDaKc
J9シリーズ最終作。うちの田舎でテレ東系といえば前回取り上げた「水戸黄門」や、クリスチャンアニメ「トンデラハウスの大冒険」で、J9とは最後まで縁がなかった。

「超攻速ガルビオン」(1984)
http://jp.youtube.com/watch?v=vLf-u1oZ_9s
http://jp.youtube.com/watch?v=Wwl5JjvPGH4
スラングルの後番組として始まった作品。うちの地元でもやっていた、と思う。が、スポンサーの玩具メーカーが倒産、番組は不本意な形で打ち切りに。ここにきてついに会社の経営が行き詰まりはじめる。

「宗谷物語」(1984)
しかも、3作続いたJ9シリーズの後番組が、こともあろうにこの伝記物だった。元は戦時中に砕氷船として建造された南極観測船「宗谷」の歴史を、シリアスかつファンタジックに描く。かつてならこの触れ幅も許されたのかもしれない。しかし時代はすでに80年代だった。アニメ専門局AT-Xに紹介ページがある。
http://www.at-x.com/program_detail/index.html?pid=1683

「ふたり鷹」(1985)
http://jp.youtube.com/watch?v=J44usiIBzX4
そしてこの作品の放送途中、国際映画社は二度目の不渡りを出して倒産、番組は打ち切られた。結局最後まで問題点である作画のクオリティは上がることはなかった。

しかし、実は今でも国際映画社という会社は版権管理の会社として存続している。が、J9シリーズをはじめ多くの作品のフィルムが散逸し、ソフト化の見通しは立っていない。その一方でなぜか、こういう建物の管理も行っている。
http://jiko-hokkai.hp.infoseek.co.jp/roadside%20hokkaido11.html
長年プロデューサーを務めた壺田重夫氏は根室市の議員なんだそうで。要はそういうことなのだ。あの時点ですでに、彼等はアニメ業界からそっちの世界に行ってしまっていたのである。

前回とあわせて振り返ってみると、僕にとってこれらのアニメは「見る駄菓子」だったのだと思う。世の中が高精度にシステマチックになっていく中で削ぎ落とされていった「駄菓子っぽさ」が、かつて確かにあったことを改めて再確認できた。



MFCオーナーの感想
fxhud402さん、投稿ありがとうございます。
で、今回はナックに続いてのアニメ・シリーズという事で、国際映画社の作品集な訳で、全部見た訳ではないのですが、知ってるのが全くありません(汗) ま、ナックの時と同じで、年代的にアニメを見る年齢ではなくなっていた、というのもありますが(笑) ただ、知らないとは言うものの、どれも見ていて懐かしい気持になりました。「若草の四姉妹」なんて、ちょっと興味あります(笑)
てな訳で、あまりコメントも出来ません。申し訳ない。ご覧になった皆さんが、それぞれ楽しんで頂ければ、と思います。今回はアップ優先しましたので、映像は僕も追って見させて頂きますし。
それと、「ふたごのモンチッチ」のシングル盤紹介のページ、その下にある名前、確かに衝撃でした(笑) こういう仕事もしてたんですね。聴いてみたいです(笑) 意外と、「ハイティーン・ブギ」の山下達郎みたいなもんだったりして(爆)
でも、これらのアニメ=見る駄菓子、とは、言い得て妙ですね。後世に残る物ではないかもしれないけど、時折無性に懐かしくなる、そんなものかもしれません。後世に残る物ばかりが良い物、というのではないんですよね。


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