1978年
前年一大センセーションを巻き起こしたパンク台風は実にあっけなく過ぎ去ってしまう。 ブームの主役だったセックス・ピストルズは1枚のオリジナル・アルバムを残してあっけなく解散。 残ったクラッシュはサウンドを変化させ後年あの名盤(?)を発表する。 しかしパンクの灯は完全には消えておらず、パンクをオッシャレ〜にしたニュー・ウェイヴが台頭するのも時間の問題となる。 この年は「フィーヴァー」という流行語を生んだビー・ジーズを中心としたディスコ・ミュージックがブームとなった。 70年代中頃になると黒人音楽においてスタイルだけでなく、音楽そのものに大きな変化が起こった。それまで8ビートが基本だったロック音楽がよりファンキーな16ビートへと変化していったのである。そのルーツはスライ&ザ・ファミリー・ストーンあたりであろう。 そしてこのビートの変化は時を同じくして現れたディスコ・ブームと結合しダンス・ミュージックの新しい流れを生み出した。その頂点に立ったのがビー・ジーズ、ドナ・サマー、アバらである。 大物ミュージシャンも揃ってディスコに挑戦した。ローリング・ストーンズ、ビーチ・ボーイズ、キッス、ポール・マッカートニー、エルトン・ジョン、シカゴ、ロッド・スチュワートあたりが有名であろうか。 とても聴けたものではないものもあるが・・・。 で、何と言ってもビー・ジーズである。 ジョン・トラボルタ主演の映画「サタデイ・ナイト・フィーヴァー」のサウンド・トラックに楽曲を提供し「愛はきらめきの中に」「ステイン・アライヴ」「恋のナイト・フィーヴァー」の3曲をたて続けにNo.1の座に送り込んだ。イヴォンヌ・エリマンの「アイ・キャント・ハヴ・ユー」もビー・ジーズの提供でNo.1ヒットとなり、アルバムから4曲のNo.1ヒットを生んだ。加えて過去にNo.1になった曲が3曲も収録されているので計7曲のNo.1ヒットを楽しめるという訳だ。 アルバム「サタデイ・ナイト・フィーヴァー」は24週間も1位を独占し、当時世界で最高の売り上げを記録した。個人的には映画もサントラもあまり好きではないのだけど。(笑) このアルバムの爆発的ヒットは多くのミュージシャンをディスコ・ミュージックに走らせた。ロック音楽そのものがビジネスになったことにより、そのスタイルだけでなく、音楽そのものに変化が起こった。それこそが、現在でこそ当たり前のようになっているが、映画とのタイ・アップである。多くのミュージシャンはサントラ盤に楽曲を提供することが1つのステイタスとなっていったのである。「サタデイ・ナイト・フィーヴァー」は作品としては好きではないが(まだ言うか・笑)、ロック史を語る上で決して避けて通れないアルバムなのである。 この年には同じくジョン・トラボルタ主演、オリヴィア・ニュートンジョンが共演して話題となった映画「グリース」もサントラ共々大ヒットしていることも付け加えておこう。 あとこの年にはロック界の偉大なる変人にしてザ・フーのドラマーでもあるキース・ムーンが死去。 グループは元スモール・フェイセズ、フェイセズのケニー・ジョーンズを加えて活動を続けるがキースこそザ・フーそのものだと思ってる私にはフーはこの年で死んだと思っている。 近年再結成して新作を出し更には初来日公演も実現させているが素直に喜べないし関心もない。。。 そういえば前年にはエルヴィスやマーク・ボランが亡くなってたんですよね。 すっかり忘れてました。(汗) 年間ランキングではシングルがアンディ・ギブ(ビージーズの末弟ね)の「シャドウ・ダンシング」が、アルバムではサントラの「サタデイ・ナイト・フィーヴァー」がそれぞれ首位を獲得。 シングル部門ではアンディ・ギブ、ビー・ジーズ、オリヴィア・ニュートンジョン、ビリー・ジョエル、ポール・マッカートニー&ウイングス、アバ、ボブ・シーガー&シルヴァー・ブリット・バンド、フォリナー、バリー・マニロウ、スティーリー・ダンらが、アルバム部門ではビー・ジーズ、リンダ・ロンシュタット、フォリナー、アンディ・ギブ、バリー・マニロウらがそれぞれ活躍した。 さて、オーナーさんの10選との比較ですが、この年も僅かにロッド・スチュワートの「明日へのキック・オフ」のみが一致。(笑) しかしビリー・ジョエルの「ニューヨーク52番街」を翌79年で選出してあるので2枚一致ということにしておきましょうね。 「赤い断層」「ダブル・ヴィジョン」「ジャズ」「スローハンド」「宇宙の騎士」は私も持っていて好きな作品です。「ジャズ」は泣く泣く落とした1枚であります。 残りの4枚はプレイヤーのシングル盤「ベイビー・カム・バック」を持っているだけで、4枚とも聴いたことがありません。トム・ロビンソン・バンドとパプロ・クルーズは名前も知りませんでした。(滝汗) 手持ちのチャート資料で確認してみるとパブロ・クルーズはありましたが、トム・ロビンソン・バンドは「国内盤シングル盤大全集」(←それでも完全ではない)なる資料を引っ張り出してようやく出てきました。(笑) 日本でだけヒットしたグループなんでしょうか? ってことで次回も楽しみです。 1. Van Halen/炎の導火線...Van Halen http://www.hmv.co.jp/product/detail/968665 エディ・ヴァン・ヘイレンの超絶ギター・テクは当時のハード・ロック・シーン、ギター小僧に計り知れない衝撃を与えた。US19位 2. 52nd Street/ニューヨーク52番街...Billy Joel http://www.hmv.co.jp/product/detail/1396640 No.1ピアノマンの座をエルトン・ジョンから奪い取ったと言っても過言ではない70年代を代表する傑作。個人的にもビートルズの次に聴いたアーティストのアルバム、ということもあり思い入れが強い作品。UK10位、US1位(8週) 3. Some Girls/女たち...The Rolling Stones http://www.hmv.co.jp/product/detail/179057 ロン・ウッドが本作から全面参加ということもあってか下品で卑猥なストーンズが更にパワーアップ。(笑) ジャケット問題もさすがストーンズと唸らせてくれた。UK2位、US1位(2週) 4. Outlandos D'Amor/The Police http://www.hmv.co.jp/product/detail/1496728 70年代最強のトリオ、ポリスのデビュー盤。楽曲はどれも完成度が高く演奏も上手い。UK6位、US23位 5. Wings Greatest Hits/Paul McCartney & Wings http://www.hmv.co.jp/product/detail/1833172 アルバム未収録のシングル・ヒット満載のベスト。オリジナル・アルバム以上に思い入れの強い1枚。US29位 6. Parallel Lines/恋の平行線...Blondie http://www.hmv.co.jp/product/detail/1418589 妖女デボラ・ハリー率いるブロンディのパンクからポップに変身した出世作で3枚目の作品。US6位 7. Foot Loose And Fancy Free/明日へのキック・オフ...Rod Stewart http://www.hmv.co.jp/product/detail/968484 ヴォーカリスト、ロッド・スチュワートの魅力満載のアルバム。どちらかというとバラードの印象が強いがストレートなロックン・ロールも聴かせてくれる好盤。US2位 8. Grease/Original Soundtrack http://www.hmv.co.jp/product/detail/413972 ジョン・トラボルタとオリヴィアが共演した青春ミュージカルのサントラ盤。しかし既に30代だったオリヴィアの女子高生役はかなり無理があるような。(笑)US1位(12週) 9. Live Bootleg/Aerosmith http://www.hmv.co.jp/product/detail/1855568 下手クソで荒っぽいがこれぞエアロの醍醐味と言える傑作2枚組ライヴ。US13位 10. Taken By Force/暴虐の蠍団...Scorpions http://www.hmv.co.jp/product/detail/24277 墓場で決闘ジャケがまたしても発禁に。(笑) 暗く物悲しい楽曲、ウリ仙人のギターといいどれをとっても最高。毒を撒き散らした仙人は本作を最後にグループを去る。 オマケ・シングル10選 1. Sunday Girl/Blondie 2. You're The One That I Want/愛のデュエット...John Travolta & Olivia Newton-John 3. You're In My Heart/胸につのる想い...Rod Stewart 4. Heart Of Glass/Blondie 5. Summer Nights/想い出のサマー・ナイツ...John Travolta & Olivia Newton-John 6. Wuthering Heights/嵐が丘...Kate Bush 7. Miss You/The Rolling Stones 8. Dust In The Wind/すべては風の中に...Kansas 9. Can't Stand Losing You/The Police 10. Just The Way You Are/素顔のままで...Billy Joel |
MFCオーナーの感想 |
1978年...ああ、何もかも懐かしい(爆)、という訳で、1978年編です。イアラさん、ありがとうございました。 個人的な話をさせて頂きますと(笑)、この年僕は高校に入学、初めて外タレのコンサートに行った(4月4日フォリナー@武道館)、吹奏楽部に入部してドラムを始めた、ラジオ関東の『全米TOP40』を毎週聴くようになった、等々の経験を経て、洋楽の趣味も大きく変わっていった時期であります。この頃、最も熱心に聴いていたのはビージーズとフォリナー、逆にパープル、キッス、エアロスミスといった所に興味を失い、いわゆる“ハードロック離れ”を起こしておりました(笑) ま、青春期には誰でも通る道ですね(笑) イアラさんも言及しておられるように、1978年は“フィーバー”な年でした(笑) いわゆるディスコ・ブームですが、僕自身前年のパンクよりは、遥かにリアルでした。ま、ディスコ曲が多数ヒットするというのは、これより以前からあるのですが、この時そのブームを牽引したのが、『サタデイナイト・フィーバー』であったのが目新しかったと思います。白人主導のディスコ・ブームというか。しかし、この年のビージーズは凄かった。1979年にかけての6曲連続全米No.1獲得もさることながら、アンディ・ギブ、イボンヌ・エリマン、サマンサ・サング、といった人たちが、ビージーズのプロデュース或いは楽曲でヒットを飛ばし、ビルボードのTOP10の半数近くが、ビージーズ関連で占められていた時もありました。アメリカ・デビュー時のビートルズ、または90年代中期の小室哲哉を彷彿とさせる大活躍でしたね。ついでに言うと、イアラさんも10選に入れておられる『グリース』の、フランキー・バリによる主題歌もバリー・ギブの曲で、やはりNo.1になりました。そして、忘れられがちですが、ビージーズ+ピーター・フランプトン主演で制作された映画『サージェント・ペパーズ』なんてのもあったりして、1978年は正しくビージーズの年でありました。彼らは、翌年明けてすぐ新作『失われた愛の世界』を出していますので、ほんと寝る間もなく創作活動に励んでいた、という事にりなりますね。いやいや、ほんと凄い(笑) で、この年のグラミーのアルバム・オブ・ジ・イヤーまで獲ってしまった『サタデイ・ナイト・フィーバー』ですが、イアラさんおっしゃるように、このアルバムをきっかけとして、サントラの在り方が変わっていきます。その頂点に立つのは、やはり『フットルース』かと(笑) 余談ですが、ミュージシャン達の既成曲を集めて構成されたサントラ盤として、この年『FM』というのがリリースされ、話題になりました。スティーリー・ダンによる主題歌のみ新曲でしたけど。確か映画は日本公開されなかったはずだし、サントラ盤も未CD化だと思いますが、ほんと内容は豪華でした。今なら、70年代名曲集、って感じ(笑) ちなみに、フォリナーの「冷たいお前」も収録されてました(笑) そんな(どんな?)『サタデイ・ナイト・フィーバー』ですが、その影響で、大物ロック・ミュージシャンたちまでディスコに挑戦した、というのは少し違うと思いますね。ディスコ・ビートを取り入れた、というのが正しい所でしょう。ストーンズにせよロッドにせよ、もろディスコに変貌した訳ではなく、自分らの持ち味は生きてますし、だいたい「ミス・ユー」で踊れるのか、なんて当時は思いました(笑) また、ストーンズもポール・マッカートニーも、機を見るに敏な人たちですから、常にその時その時のトレンドを上手く自分たちの音楽に消化していた訳で、ディスコも例外ではなく、だからこそ今でも生き残っていられるのです。ディスコ・ブームに便乗して安直なヒット曲を放った、という論説は後年のヒットチャート嫌いの評論家によるものであって、またそういうのを簡単に信じ込んでしまう若い人たちが多いのは考え物です。ディスコは決して負の遺産ではありません。ディスコをバカにするな、と後追いの若い連中に言いたいです(笑) さて、ついつい長くなってしまったので、そろそろ終わりにしたいと思いますが、イアラさんと僕の10選との比較ですが、前述した通り、このころは趣味が変わってましたので、それが僕のセレクトには繁栄されてると思います。ホール&オーツ、パブロ・クルーズ、プレイヤーあたりはそうですね。イアラさんは、トム・ロビンソン・バンドをご存知なかったそうで、一瞬驚きましたが、考えてみれば現代では評価の対象外なのでしょう。日本でだけヒットしたのか?、なんて言われると、越え難い世代の壁を感じます(笑) 彼らはイギリスのバンドで、パンク・ムーブメントの中から登場したのですが、本国で「2・4・6・8モーターウェイ」が大ヒットし、その勢いで日本に上陸してきました。僕も、当時この曲のドーナツ盤買いましたよ(笑) その頃からトム・ロビンソンはゲイである事を公言してまして、今思うとそこいらが硬派を自称するロックファンから敬遠され、現代では隠蔽されてるのかと思います。そう思うと、パンク信奉者てのもろくなもんじゃないですね(笑) あと、バンドとしての活動期間が短かったのもマイナス要因かもしれません。 という訳で、次は1979年、待ち遠しい(笑) イアラさん、よろしくお願いします。 |