みんなの名盤

投稿No.098 イアラさんの

ロックの道は1日にしてならずぢゃ
−1977年編−


1977年

パンク・ロックが世界中を席巻したのが1977年のこと。 
そのルーツを辿ればザ・フー、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ドアーズあたりが原点であろうか。バディ・ホリーが在籍したことで知られるクリケッツが原点だという説もある。
それは置いておいてこの年のパンク・ロック・ムーヴメントはイギリスから爆発したものだと、思っている人も少なくないようなので簡単に説明するとそれは少し違う。
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドやアンディ・ウォーホルらによるアンダーグラウンドな文化が発端であり、その流れを継承しているのがルー・リード、イギー・ポップ、テレヴィジョン、ニューヨーク・ドールズ、パティ・スミスらであり、UKパンクと比べてみるとノイジーでありながらどことなく芸術的な感じがするのである。
アメリカでは線香花火程度のブームだったグラム・ロックではあるが、その芽は確実に息吹いておりニューヨーク・パンクへと継承される。そのニューヨーク・パンク・ムーヴメントはパティ・スミスのアルバム「ホーセス」のリリースされた75年が始まりだというのが一般的である。

ニューヨークで発火したパンク・ムーヴメントはラモーンズらを筆頭としたバンド達のイギリス遠征によって瞬く間にイギリスにも飛び火した。その頃のイギリスは深刻な経済不安に陥っており景気も最悪。特にロンドンには職にあぶれて行き場をなくした若者達が溢れかえっていた。
そんなイギリスの若者達の怒りと欲求不満を満たすのに選んだのが音楽であった。そんな中でもはや難解で長ったらしいプログレッシヴ・ロックは無用の長物でしかなかった。経済的、社会的不安、不満が高まるにつれて王道系ロック(特にプログレ)は一気に若者達の間で嫌悪の対象となっていった。そんな社会的不安なイギリスを脱出して海外で優雅な生活を送る大物ミュージシャンたちにも・・・。
そう、イギリスには世の中への怒りをストレートに代弁する人間が必要とされていたのだ。プログレをはじめ大物アーティストの音楽に馴染めない若者達が勢いに任せて作ったのがパンク・ロックである。
そのノイジーでやたらとテンポの速い祖末な演奏と攻撃的な歌詞は瞬く間に若者達の間に浸透し、ロックン・ロールが本来持っていた野蛮性を甦らせた。

その若者達の代弁者となったニュー・ヒーローこそセックス・ピストルズやクラッシュであった。
ピストルズのマネージャーであったマルコム・マクラーレンこそUKパンクを世界中に爆発させた張本人である。「俺は反キリスト論者、俺はアナーキスト・・・」という過激で攻撃的な歌詞を持つシングル「アナーキー・イン・ザ・UK」は放送禁止になりながらも見事に若者達の欲求を晴らしヒットした。唯一のオリジナル・アルバム「勝手にしやがれ!」はアルバム・チャートでも見事1位を獲得。だがアメリカではグラム・ロック同様に線香花火程度のブームでありチャートには全くといっていいほど影響はなかった。
パンクは現在でもファッションや音楽性によって、かなりのロック好きを自認する人にも敬遠され続けている。
だがロックの歌詞ってそのほとんどが日常的なことであったりして大したことは歌われていない。政治臭いメッセージが込められていたりして、平和ボケした日本では受け入れられないような気もするのだが。
まぁ、興味があれば名盤と呼ばれてる作品ぐらいは一度は聴いておいてもらいたいものである。
それ以前にノイジーでただわめき散らしてるってのがダメか。(笑)

年間ランキングではシングルがロッド・スチュワートの「今夜決めよう」が、アルバムがフリートウッド・マックの「噂」がそれぞれ首位を獲得。
シングル部門ではバーブラ・ストライザンド、レオ・セイヤー、スティーヴィー・ワンダー、イーグルス、フォリナー、フリートウッド・マック、スティーヴ・ミラー・バンド、バリー・マニロウ、エレクトリック・ライト・オーケストラ、アリス・クーパー、アバらが、
アルバム部門ではフリートウッド・マック、イーグルス、キッス、ジョージ・ベンソン、スティーヴ・ミラー・バンド、ビー・ジーズ、ドナ・サマー、ピーター・フランプトン、バーブラ・ストライザンド、リンダ・ロンシュタット、コモドアーズらがそれぞれ活躍した。

さて、オーナーさんの10選との比較ですが、この年は僅かにイエスの「究極」のみが一致。(笑)
「太陽神」「アニマルズ」「ロックン・ソウル」「ペガサスの祈り」「栄光の旅立ち」「感激! 偉大なるライヴ」「世界に捧ぐ」の7枚は私も持っているし好きなアルバムなんですが選外となりました。
ストーンズはリリースされてるライヴでは文句なしに最高のものですよね。
特にエルモ・カンボ・サイドが渋いです。「フィンガープリント・ファイル」も入ってるし。
フロイド、ホール&オーツ、クイーンとかなり悩みましたよ。
10枚だけ選ぶのってホント難しいです。
残る1枚のジャニス・イアンはチャート・ファンの私としては失敗で現在でも未聴だったりします。(汗)
次回も楽しみですね。


1. Rumours/噂...Fleetwood Mac
http://www.hmv.co.jp/product/detail/84507
「夢のような音楽」という形容(ライナーに書いてあった・笑)がピッタリの傑作。ロック界の妖精と呼ばれたすちーびーが愛らしい・・・。US1位(31週)

2. Never Mind The Bollocks/勝手にしやがれ!...Sex Pistols

http://www.hmv.co.jp/product/detail/893966
パンクの基本中の基本。No Future!! UK1位

3. Let There Be Rock/ロック魂...AC/DC

http://www.hmv.co.jp/product/detail/1932138
リフ主体のためか我が国では意外と人気がない大物中の大物。故ボン・スコットのけだるいヴォーカルもナイス。邦題も素晴らしい。(笑)

4. Low/David Bowie

http://www.hmv.co.jp/product/detail/2000088
アメリカで傷ついたボウイがヨーロッパに帰ってブライアン・イーノと作りあげた実験音楽。UK2位US11位

5. The Stranger/ストレンジャー...Billy Joel

http://www.hmv.co.jp/product/detail/172459
ビリーの出世作となった5作目。日本でも売れに売れた説明不要の名盤。UK25位、US2位

6. Going For The One/究極...Yes

http://www.hmv.co.jp/product/detail/1959270
リック・ウェイクマンが復帰して大作主義を捨てたかに見えたが最後でやってくれました。(笑)音そのものは変化しているけど。UK1位、US8位

7. The Clash/白い暴動...The Clash

http://www.hmv.co.jp/product/detail/1806063
時代を象徴するロック・バンド、クラッシュのデビュー盤。UKパンクってただ攻撃的なだけでなく政治色が濃いのよね。UK12位、US128位

8.  Moonflower/Santana

http://www.hmv.co.jp/product/detail/1942657
スタジオ録音とライヴをランダムに収録した異色作。どうせならライヴ2枚組として聴きたかったかな。。。US10位

9. Seconds Out/眩惑のスーパー・ライブ...Genesis

http://www.hmv.co.jp/product/detail/256635
プログレ四天王に入れてもらえないジェネシス(まだ言うか・笑)の傑作2枚組ライヴ。フィル・コリンズが見事にピーガブの代役を務めてます。UK4位、US47位

10. Virgin Killer/狂熱の蠍団...Scorpions

http://www.hmv.co.jp/product/detail/2644578
ジャケットが衝撃的だった発禁の常連スコーピオンズのハード・ロック教典。現在では我が国でさえ発禁ってどういうこと? オリジナル・ジャケは「投稿No.34」でどうぞ。(笑)


オマケ・シングル10選


  1. Hotel California/Eagles
  2. Holidays In The Sun/さらばベルリンの陽...Sex Pistols
  3. God Save The Queen/Sex Pistols
  4. Go Your Own Way/オウン・ウェイ...Fleetwood Mac
  5. We Are The Champions/伝説のチャンピオン...Queen
  6. Love Theme From "A Star Is Born"/"スター誕生"愛のテーマ...Barbra Streisand
  7. I Just Wanna Be Your Everything/恋のときめき...Andy Gibb
  8. How Deep Is Your Love/愛はきらめきの中に...Bee Gees
  9. Dreams/Fleetwood Mac
10. Dancing Queen/Abba



MFCオーナーの感想
はてさて、1977年です。僕自身は、この時中学3年生、洋楽(=ロック)を聴く、という行為にも余裕が出てきて(笑)、あれやこれや生意気な事を言いながら、ヒットチャートを中心に聴きまくっていた時期でした(笑)
で、イアラさんも熱弁を振るっておられますが、この年の話題は何といってもパンクでした。ただ、個人的にはパンク・ムーブメントも大した影響力はありませんでしたね。何故か。イアラさんもおっしゃってますけど、このムーブメントは、いつの時代にもある、既成概念への抵抗みたいなものでありまして、大人の価値観に若者が反旗を翻す、なんてのは珍しいことではありません。ロックの世界に於いては、数年周期でそういう波があった訳で、ロックンロールの誕生、ビートルズをはじめとする自作自演のビートバンドの台頭、サイケデリック・ムーブメント、ハードロック&プログレの登場、等々様々な波が続いた後、そういった波の新しい形としてパンクがあったのだ、と僕は考えてます。ただ、パンクが新しかったのは、原点回帰というか、斬新な音楽やスタイルを提唱してみせるのではなく、シンプルなロックンロールに戻っていった、という点で、60年代後半から商業化し、大きな産業となってしまったロックにノーを突きつけた、といえる訳です。この頃、パンクに夢中になった人は、ほとんどが近頃(70年代中盤の話ですが)のロックはつまらない、と感じていたのでしょう。所が、僕自身は、まだそこまでの境地に達していませんでした。近頃のロックはつまらん、と言えるほど聴き込んではいなかったし、知識もありません。ひたすら、ラジオから流れてくるロックに耳を傾け、いちいち感動していた時期だったのですから、パンクなんて、その音楽だけをとってみた場合、夢中になれるようなものではありませんでした(この場合のパンクとは、主にロンドンパンクを指しています)。なので、パンクムーブメントに関しては、何の興味もなかったし、いつの間にかムーブメントは終わっていました。ピストルズを初めて聴いた時、過激な言動の割には音楽はごくフツー、なんて感想を持った程度です(笑)
この前年、つまり1976年の秋頃から、ミュージック・ライフなどでパンクムーブメントの事を知りましたが、当時はニューヨークもロンドンも同じものと思っていました。パンクムーブメントはニューヨークで発生し、ロンドンへ飛び火したとか、音楽性がまるで違うとか、ロンドンパンクはラモーンズの影響下にあるとか、とかいった事は後年某誌の特集で知りました(笑)
ま、そんなパンクですが、今でもパンク・ロックは存在しています。が、70年代のパンクムーブメントの頃とは、全く違う物と言っていいでしょう。ヘビーメタルやプログレと同様、今やパンクはスタイルにしか過ぎません。パンクに思い入れのない僕でも、そういう事実は悲しいな、と思っています。
と、ただのノンポリ洋楽小僧だった僕としては、この年の印象的なシングルとしては、やはりアンディ・ギブの「恋のときめき」になってしまうのですね(笑) あと、「愛はきらめきの中に」これドーナツ盤買いました。歌詞も暗記するほど聴きましたよ(笑)
さて、イアラさんの10選ですが、確かに僕と一致するのはほとんどないですが、それだけ多様な時代だったという事なのです。いい時代でした(またかよ)。イエスの『究極』は、2年ぶりだか3年ぶりだかの新作で、リック・ウェイクマンが復帰した、というのもあって、発売前からかなり話題になってました。新作とのインターバルが2年空くとか、旧メンバーが復帰するとか、そういうのは今では珍しくも何ともありませんが、それが大きな話題になる時代だったのです。嗚呼、今は昔(爆) で、そのイエスの新作、ジャケットデザインがロジャー・ディーンからヒプノシスに代わった、という事だけでも大事件のはずなんですが、当時は気づきませんでした(笑) 確かに、ここからイエスは変わっていきます。実は、後から思えば、プログレの衰退はこの頃始まっていたのですが、小僧は何も気づいていなかったのでした(笑) 若かったなぁ(爆)
あと、余談ですが、スコーピオンズの『バージン・キラー』後年CDで買いましたが、ジャケットは例の少女のヤツです。それ、今売ってないのですか? そうすると、僕の持ってるCDも、かなり貴重ですね(笑)
という訳で、イアラさん、ありがとうございました。次の1978年も楽しみにしてます。この年、僕個人には、大きな嗜好の変化がありました。どうでもいいことですが(笑)


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