みんなの名盤

投稿No.087 イアラさんの

逆襲のシャア−1969年編−

1969年

ウッドストック・フェスが開催されたことでも知られるこの年もまたロック史において激動の年であった。

この年はその後の音楽シーンに大きな足跡を残すことになるビッグ・グループが揃ってレコード・デビューを果たした。
イギリスからはニュー・ヤードバーズ改めレッド・ツェッペリン、前年クリームを解散させたエリック・クラプトンを中心とした究極のスーパー・グループ、ブラインド・フェイス、ロッド・スチュワート、ロン・ウッドの加入によりスモール・フェイセズ改めフェイセズ、プログレ界の帝王キング・クリムゾンなどが、対するアメリカからはラテン・ロックのサンタナ、新人としては異例の2枚組のアルバムで登場した大型ブラス・ロック・グループ、シカゴ、有名グループの元メンバーが集まったクロスビー、スティルス&ナッシュ、アトランタ・ポップ・フェスティバルで衝撃的なデビューを果たしメイン・アクトのレッド・ツェッペリンを喰ってしまったグランド・ファンク・レイルロード、スタジオ・ミュージシャンで結成されたオールマン・ブラザーズ・バンドなどが次々にデビューし、世界中の音楽ファンの熱い視線を集めた。
ディープ・パープルが黄金の第2期と呼ばれるイアン・ギラン、ロジャー・グローヴァーを加えた編成になり、キンクスの人気ベーシスト、ピート・クワイフが脱退してジョン・ダルトンが起用されたのもこの年。

またこの年、全米各地では野外でのビッグ・コンサートが毎月のように行われ、中でも8月にニューヨークのヤスガーズ・ファームで3日間にわたって行われたウッドストック・アート&ミュージック・フェアにはジミ・ヘンドリックス、ザ・フー、サンタナ、CSN&Y、ジェファーソン・エアプレーン、ジャニス・ジョプリン、CCRほか多数の人気アーティストが参加、40万人以上の若者を集め大きな話題となり歴史に残るイベントとなった。
    
ニュー・ロック、アート・ロックという言葉が盛んに使われるようになったのもこの年のことであり、中でも最も人気を誇ったのがサイケデリックのカリスマ的存在であるアイアン・バタフライである。アルバム「ガダ・ダ・ヴィダ」は最高4位にもかかわらず69年度の年間チャートでトップに輝くベスト・セラーとなり、前年のジミ・ヘンドリックスに続きロック・アルバムの年間1位ということでロック・アルバムの時代を決定的なものとした。
アイアン・バタフライを筆頭に、この時期ニュー・ロックと呼ばれたグループのほとんどが、その人気のわりにシングル・ヒットが少ないのは、彼等がシングル・ヒットよりもアルバム作りに精力を注いだからである。
そして荒々しい破壊的なライヴの魅力で人気のフーがロック界初のオペラ・アルバム「トミー」を発表する。これはビートルズの「サージェント・ペパーズ〜」に欠けていた視覚的要素を加えたことによりトータル・アルバムを完成系へと導いた偉大なる作品である。後に映画、舞台化もされ現在でも世界中で人気があり愛されている作品なのである。
音楽大国でありながらその魅力に気付かないのは日本ぐらいのものだろう。

一方シングルでは架空のバンド、アーチーズの「シュガー・シュガー」が年間トップに輝いた。この曲はアニメ・キャラが演奏しているように見せていて、後の日本の「なめ猫」にも多大なる影響を与えている。他には「輝く星座」「ウエディング・ベル・ブルース」の2曲を1位 に送り込んだフィフス・ディメンション、一発ヒットながら歴史に残るゼイガーとエバンスの名曲「西暦2525年」、3曲をトップ3に送り込んだCCRとブラッド・スウェット&ティアーズの活躍も見逃せない。

ローリング・ストーンズを脱退した(させられた)ブライアン・ジョーンズが自宅プールで謎の溺死をし、新メンバーであるミック・テイラーお披露目のフリー・コンサートが急遽ブライアン追悼コンサートに変更される。このステージの前座にはキング・クリムゾンが出演。そして3年振りのUSツアーを敢行しカリフォルニアのオルタモント・スピードウェイで開催したフリー・コンサートでは警備にあたっていたヘルス・エンジェルスが観客の黒人青年を刺殺するという事件が起こった。この混乱の模様はドキュメント映画「ギミー・シェルター」で確認できる。安易なフェスティヴァル人気がもたらした事故ともいえよう。

ドアーズの看板ヴォーカリスト、ジム・モリスンがマイアミ公演中に自身のナニを露出して逮捕された事件もこの年の出来事。サイケデリックなトリップ感に満ちたオルガンと瞑想的で暗喩なモリスンの歌詞で人気のバンドであるが、酔ってTVに出演したり喧嘩を繰り広げたりでも有名であった。年末には空港で酔ってスチュワーデスにちょっかいを出して逮捕される。

さて、兼ねてから不仲説が伝えられていたビートルズだが、ソロ活動も活発になり、ジョン・レノンはプラスティック・オノ・バンドとしてシングル「平和を我等に」をトップ10に送り込み、9月にはカナダのトロントで行われたロックン・ロール・フェスティバルに出演し、3年半ぶりのステージを踏んだ。更には11月にはポールの死亡説が流れ話題となる。そんな解散の危機を臭わせたビートルズではあったが前年に自身のレーベル、アップルからの初アルバム「ザ・ビートルズ」、シングル「ゲット・バック」「カム・トゥゲザー」のNo.1ヒットを出し相変わらずの人気を誇っていた。


1. Tommy/ロック・オペラ "トミー"...The Who
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1245271
ロック界の最重要作。他に言うことナシ。(笑)  UK2位、US4位

2. Let It Bleed/The Rolling Stones

http://www.hmv.co.jp/product/detail/810572
ブライアン・ジョーンズの死を乗り越え激動の60年代を締めくくる傑作。UK1位、US3位

3. Led Zeppelin/レッド・ツェッペリン登場...Led Zeppelin

http://www.hmv.co.jp/product/detail/188869
これほど衝撃的なデビュー作があったであろうか!! 著作権問題は置いておいて。(笑) UK6位、US10位

4. Arthur Or The Decline And Fall Of The British Empire/アーサー、もしくは大英帝国の衰退ならびに滅亡...The Kinks

http://www.hmv.co.jp/product/detail/2569689
悲劇のロック・オペラ。「投稿No.23」参照。(笑) US105位

5. In The Court Of The Crimson King/クリムゾン・キングの宮殿...King Crimson

http://www.hmv.co.jp/product/detail/1779728
プログレ界の帝王として君臨するクリムゾン衝撃のデビュー作。UK5位、US28位

6. Abbey Road/The Beatles

http://www.hmv.co.jp/product/detail/996
実質的にはビートルズ最後の作品。しかしこれをラスト・アルバム扱いするのは止めて欲しい。。。UK1位(19週)、US1位(11週)

7. Led Zeppelin II/Led Zeppelin

http://www.hmv.co.jp/product/detail/188878
ハード・ロックを全面に押し出した代表作でもあり問題作でもある2ndアルバム。UK1位、US1位(7週)

8. Chicago Transit Authority/シカゴの軌跡...Chicago Transit Authority

http://www.hmv.co.jp/product/detail/802462
ロックといえばシカゴだったこの時代。デビュー作にして2枚組のボリューム。US17位

9. Smash Hits/Jimi Hendrix Experience

http://www.hmv.co.jp/product/detail/911545
エクスペリエンス時代のシングル・ヒット集。US6位

10. Through The Past, Darkly (Big Hits vol.2)/ホンキー・トンク・ウィメン...The Rolling Stones

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B6%E3%83%BB%E3%83%91%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC
ブライアンへの追悼作品でもあるイギリスでのシングル・ヒット集第2弾。アメリカとは内容が異なる。八角形のジャケットも話題に。UK盤は現在廃盤。UK2位

注) 3位と10位は当時邦題があったが現在では使われていない。


オマケ・シングル10選

  1. Shangri-La/The Kinks
  2. I Can Hear Music/The Beach Boys
  3. Time Of The Season/ふたりのシーズン...The Zombies
  4. Aquarius〜Let The Sunshine In/輝く星座〜レット・ザ・サンシャイン・イン...Fifth Dimension
  5. First Of May/若葉のころ...The Bee Gees
  6. Love Theme From Romeo And Juliet/ロミオとジュリエット...Henry Mancini & His Orchestra
  7. Sugar Sugar/Archies
  8. Suspicious Mind/Elvis Presley
  9. Proud Mary/Creedence Clearwater Revival
10. Wedding Bell Blues/Fifth Dimension



MFCオーナーの感想
いよいよやってきました、“激動”の1969年です(笑) イアラさん、ありがとうございます。
いつになく、前文が気合入ってますが、一般的な事を書いてあるようでいて、実はイアラさんの好みが色濃く出ているのが、また面白いです^^
で、ここにある10枚、ほとんどロックの定盤化したものばかりですね。正に、一家に一枚。たとえ、ここにある10枚を聴いてなかったとしても、ジャケットくらいは誰でも目にしているはずです。キンクス以外は(笑)
10位にセレクトされているストーンズのベスト盤、僕はCD化されてから買いましたが、今は廃盤なんですね。曲目はイギリス盤と同じです。
ま、とにかく、解説は不要ですね。定盤ばかりだし(笑) オマケのシングル10選を見てると、イアラさんの意外な嗜好を感じるように思うのは、気のせい?(笑)
次回はいよいよ70年代に突入です。冷静ではいられなくなるようなセレクションに期待しましょう。
所で、余談ですが、イアラさんからの原稿では、“レッド・ツェッペリン”は全て“レッド・ツエッペリン”という表記になっていたのですが、これは敢えてそのようにしたのでしょうか? 直しましたけど、余計なおせっかいだったでしょうか?


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