みんなの名盤

投稿No.062 fxhud402さんの

チューバってほんとにいい楽器だなぁ ... 。

なぜか今回は思い出話から。

忘れもしない、地元の中学に入学した翌日、恐る恐る足を踏み入れたブラスバンド部の部室。立ち込めるオイルの臭いに思わずむせ返りそうになる。

「あの、入部したいんですが...」

コルネットでチェッカーズの「OH!POPSTAR」を練習していた男の先輩(実は副部長。そして近所の洋服屋の息子)が、やおら手を止めてこちらを一瞥。

「...で、楽器は何をやってみたいの?」

「えーと...」

スーザ楽団『美中の美:スーザ・コンダクツ・スーザ』より「士官候補生」。
・レイ・ドレイパー・クインテット『フィーチャリング・ジョン・コルトレーン』より
 「クリフォード・カッパ」。
・ジョン・フレッチャー『魔法のテューバ』より「蚤の歌」。

・ロジャー・ボボ『グラヴィティ・イズ・ライト・トゥディ』より
 「ザ・モーニング・ソング」。
・ボブ・スチュワート『ゼン&ナウ』より「ハムボーン」。
・へヴィ・テューバ&ジョン・サス『サージャンハフト』より
 「ツァウストラはかく語りき」、「ハンドバッグと外出着」。
・ファイアーハウス・ファイブ・プラス2『ゴーズ・サウス!』より
 「アラバマ・ジュビリー」、
 『トゥエンティ・イヤーズ・レイター』より「ウォーク・ライト・イン」、
 「小さな花」、「渚にひとりきり」、「モスコーの夜は更けて」。

・19-21ユニバーサル・バンド『ブラスは世界を結ぶ』の全曲。
・コンポステラ『COMPOSTERRA』より「オープニング〜ニキシのまだ来ない朝」、
 「しあわせなユダヤ人」、「同志はたおれぬ」、「プリパ(ジョニーが凱旋する時)」。
・大工哲弘『ウチナージンタ』の全曲。

・ランディ・ニューマン『バッド・ラヴ』より「シェイム」。
・リンゴ・スター『バラの香りを』より「ラック・マイ・ブレイン」、
 『オールド・ウェイヴ』より「シーズ・アバウト・ア・ムーヴァー」。
・タジ・マハール『ザ・リアル・シング』の全曲。
・ダーティ・ダズン・ブラス・バンド『フューネラル・フォー・ザ・フレンズ』より
 「ジーザス・オン・ザ・メインライン」、「アメイジング・グレイス」。
・百怪の行列『今日は凶です恐怖です!』より「命・楽シ・短シ・有リ難シ」。

・アーノルド・ジェイコブズ『ポートレイト・オブ・アン・アーティスト』より
 ジェイコブス師の言葉「深く息を吸って、リラックス。そして楽しもう...。」


信じてもらえないかもしれないが、僕は自ら志願してチューバ・パートに入った。その後の展開はぐちゃぐちゃ言うまでもない。賭けてもいいが、今楽器をポンと渡されて「なんか一曲弾いてみて」と言われても、僕はどうすることもできないだろう。音ともいえないブホッとかいう情けなーい破裂音を献上仕るのがせいぜい。要するに動機が不純だったのだ。おもちゃをねだる子供のように僕はただただこの金属管が欲しかっただけで、それで演奏する音楽なんてどうでも良かったのである。

それでもなお、この融通の利かない楽器(注)を好きになったことは僕にとってはかけがえのない財産だし、アイデンティティの一つだと思う。今回挙げた作品群は「もしチューバ・コンピを作るとしたら?」という課題に対してとりあえず頭に浮かんだ「候補」だ。本気で作ろうと思ったらもう少し出てくると思う。とりあえず、スーザが一曲だけってのはあり得ない。アルバーツやテンペランス・セヴンのようなイギリス演芸バンドからも入れたい。フローズン・ブラスに入っていたアフリカや南米のブラス・バンドも。

とはいえ、こうして並べてみると当時のことが強烈に思い出されてくる。スーザフォンを担いで行進した時の、左肩の負担と引き換えにグルーヴが体に絡み付いてくる感覚、そして定期演奏会やマーチング・コンクールの本番が終わったときの爽快な達成感・開放感...。それぐらいしかいい思い出はない。あとは...。でも、これだけあれば十分なのかもしれないな。

というわけで。いまちさん、今回はリクエストに答えられなくてごめんなさい(平身低頭)。カバー曲特集は...機会が...あれば...えー...考えます、ハイ。

(注)これこそ下手糞の言い訳。今回挙げたロジャー・ボボのアルバムが何よりの証拠だ。リトル・フィートのメンバー(フレッド・タケット)との共作を含む本作は、ロス響の怪人ボボがチューバをあたかもフリューゲル(チャック・マンジョーネ、覚えてます?)のごとく歌わせる驚異の一枚。聴いてるこっちは、あまりの凄さにあごが外れっぱなし。はへはほほひへ(誰か戻して)。



MFCオーナーの感想
fxhud402さん、度々の投稿、本当にありがとうございます。
意外な志向をお持ちの方とは思ってましたが、吹奏楽部でチューバの経験がおありとは驚きました。しかも、ご自分から希望されたとか。僕も高校の時、吹奏楽部にいましたが、チューバ担当の人で、自分から望んだという人はいませんでしたね。たいていの人は最初はトランペットやトロンボーンを希望するのですが、希望者が多い為泣く泣くチューバやユーフォニウムに回る、というケースが大半だったと思います。もちろん、やり始めてからチューバが好きになった、という人も多かったですけど。ただ、大きな楽器だし、マーチなどの演奏すると非常に目立つので、決して陽の当たらない楽器ではないですよね。それどころか、ブラスバンドに於いては花形と言っていいかと。マーチでは裏打ちばかりのホルンに比べれば、見せ場も多かったのではないでしょうか。
そのチューバをフィーチャーした名曲集、吹奏楽ばかりではなく、一般の音楽ファンにも馴染みのあるロック系の作品もセレクトされているのには再度驚きました。あるもんなんですねぇ。ま、確かにポール・マッカートニーなども、ブラスバンドっぽいホーンアレンジの曲も結構ありますから、不思議ではないのでしょうけど。これに機に、ロックに於けるチューバの効用も、見直してみたいものです(笑)
本文中にも書かれていますが、本番を終えた時の達成感・爽快感というのは、どんな音楽でも楽器でも、共通のものです。皆それを何度も味わいたくて、懲りずにステージに立つのです(笑) そういう快感を知っておられるfxhud402さんは幸せと思いますよ。それぐらいしかいい思い出はない、という事ですが、それだけで十分です。それと、「深く息を吸ってリラックス」いい言葉ですねぇ。僕も本番直前には、常にこの言葉を思い出すようにします。なに、チューバもドラムも楽器である以上、基本は一緒ですって(笑)


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