みんなの名盤

投稿No.055 fxhud402さんの

2丁目 ... じゃなく2曲目の名曲

自身の貧相な経験から言って、アルバムの2曲目には名曲が多い...と思う。1曲目でつかんだ聞き手の耳をさらに自分の側へと引っ張るべく、アーティストがアルバムの曲順を考える上で気の抜けない所なのだ。だから、ここの曲はアルバムの発表前後に係わらずシングルカットされることが多いし(例:エルトン・ジョン「風の中の火のように」)、そうでなかった曲の多くが「隠れた名曲」として愛されているように思う。そんな例をいくつか紹介してみよう。

Can't let go/E,W&F
この曲を紹介したくてこの企画を考えたといっても言い過ぎではない。大名盤「黙示録」の2曲目である。アースの全キャリアの中で一番好きな曲は?と聞かれたとしたら、僕は迷った末にこの曲を選ぶだろう。イントロのホーンが実に印象的な代表曲「石の刻印」と、問答無用の大ヒット曲である「アフター・ザ・ラブ・イズ・ゴーン」に挟まれたいわば「つなぎ」の曲でありながら、この隙一つないポップ・ワールドはどうだ。愛を携えての「暗黒への挑戦」を歌うポジティブな歌詞といい、それをさらに煽るキックの利いたピアノといい、鉄壁のコーラス・ワークといい、この時期のアースの素晴らしさがこの一曲に全て詰まっている。これだけのレベルの曲をアルバム内の「つなぎ」としてサラッと聴かせるところが、絶頂期のアーティストの恐ろしいところなのだ。さぁ、今夜もモーリスの朗々としたシャウトに胸キュンしようか...。

Talking out of turn/Moody blues
ジョン・ロッジのペンによる、アルバム「ロング・ディスタンス・ヴォイジャー(天海冥)」の2曲目である。パトリック・モラーツの操るシンセサイザーに導かれて、ジャスティン・ヘイワード十八番の必殺ポップ・ロック「魂の叫び」を、重厚な生ストリングスががっぷり四つに受け止める。「ちょっと的外れなほんの一言で、取り返しのつかない失敗、かけがえのない愛を失ってしまうなんて...」と歌うジョンに、そっと寄り添うように生の弦が絡む瞬間はアルバム序盤のハイライトだ。そして二人の共作によるディスコ・ソング「ジェミニ・ドリーム」へと続く。80年代以降のムーディーズはジャスティンとジョンの双頭バンドと言ってもいいのだけど、こんな所にも彼らのチームワークの良さが感じられる。

Keep on dreamin'/Jefferson starship
アルバム「奇蹟の風」の2曲目である。このアルバムからグレース・スリックが本格復帰を果たし、それを受けてよりアメリカンロックの主流へと揺り戻しが図られている。プロデューサーもREOスピードワゴンを成功させたケヴィン・バーミッシュへと代わり、前作までのプログレ・ハード的な音作りは出来ないと悟ったエインズレー・ダンバーは脱退、ミッキー・トーマスのかつてのバンド・メイトで、後に「謎のフィットネス男」のキャラクターを確立することになるドニー・ボールドウィンに交代している。
そんな状況で作られたアルバムなので、曲目はこの体制ならではの新生面と、「ジェーン」以来のロックンロール・パワー路線をうまくバランスさせながら進んでいく。大名曲「ファインド・ユア・ウェイ・バック」を手がけたクレイグ・チャキーソの手になるこの曲は後者だが、前作までの派手な音作りとは違って、非常にあっさりとした印象だ。しかし、この爽やかなメロディは、ややもすると前作までのスタイルでは埋もれてしまっていたかもしれない。歌伴に徹したドニーのドラミングも曲にマッチしており、B面2曲目の「ブラック・ウィドウ」のようにエインズレーの存在感が恋しくなるようなことがない。そういう意味でも本作の美点を象徴する一曲だと思う。

Barmingham/Randy newman
南部百景...されどその実体は地獄巡りの如し。70年代におけるアメリカ音楽界の最大の収穫の一つであろう作品、「グッド・オールド・ボーイズ」の2曲目。オープニングの「レッドネックス」で暢気なクラリネットに導かれて南部の地に降り立った聴き手が最初に出会うのが、このバーミングハムでローラー技師をしている男だ。彼は「アラバマ1の大都会」と言う名の人外魔境で日々を生きている。家族と自称「アラバマ1の駄犬」と共に、愛に包まれて、そしてもはや諦念ともわからないくらいに大きな絶望を持ちながら...。語り部ランディのバックでたなびく弦は、さながら燈る夕餉の灯かりのようだ。

とりあえずはこんな感じです。皆さんの好きな2曲目も聴いてみたいですね。それでは〜。



MFCオーナーの感想
fxhud402さん、投稿ありがとうございます。
今回はA面2曲目ですか、やられたなぁ、盲点ですね(笑) でも確かに、そのアルバムの“核”、もしくは“ウリ”となる曲が2曲目に置かれているケースは多いですね。考えてみますと、一曲目はいわゆる“つかみ”な訳で、とにかく聴き手を引きつける役目を背負ってる訳です。そして、つかみに成功したら、2曲目で一番目か2番目に出来の良い曲をぶつけて、そのまま引きずり込んでいく、という作戦でしょうか。2曲目に名曲が多いのは当然と言えます。アルバムタイトル曲が2曲目というパターンも多いし、やはり2曲目は重要ですね。さすがfxhud402さん、目の付け所が違います。
実は、MFC5週年記念として去年、「名盤100選」のアルバムの一曲目だけを集めてCDを作ったのですが、その時編集しながら「このアルバムは2曲目の方がずっといいんだけど(好きなんだけど)なぁ」と内心思っていたのも、いくつかありました。fxhud402さんの投稿を読んで、思い出しましたよ(笑)
で、ふと、僕が思いついた「2曲目の名曲」といえば、
With A Little Help From My Friends/The Beatles
New Kid In Town/Eagles
Rock With You/Michael Jackson
Blue Morning Blue Day/Foreigner
Wonderful Tonight/Eric Clapton
Healing Hands/Elton John
Rendevouz 6:02/UK
Peace Of Mind/Boston
Rock Steady/Bad Company
なんてとこがあります。シングル曲も多いですね。イーグルスは『オン・ザ・ボーダー』2曲目の「恋人みたいに泣かないで」がこれまた名曲です。『呪われた夜』の2曲目「トゥー・メニー・ハンズ」もいいし、2曲目の名曲度No.1はイーグルスかも(笑) 皆さんのお好きな2曲目は何でしょう?投稿お待ちしてます(笑)
と、2曲目もいいですが、実はA面ラストにも捨てがたい曲が多いんです。こちらは、2曲目と違って地味な曲が多いんですけどね。今度ネタにしようかしらん(爆)


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