タイトル通りの内容です(敬称略)。主に90年代のバンドが中心。ではいきます。 Pas Des Chat(パディシャ)「Prayer」 「ピチカート・ファイブに対するアルファレコードからの回答」として登場したVo&Key二人によるユニット。本作はレコード会社を移籍して出した三枚目のアルバムで、前作までのAOR路線から一転、堂々たるバラードであるタイトル曲を皮切りにインタールードを多用した現代のR&Bを聴かせる。そのクオリティはリリースから10年近くたった現在もまるで色あせていない。 HOOPER「OLIVER」 CM音楽等で活躍してきたミュージシャン3人によるユニット。本作は二枚目にして初のフル・アルバム。前作"7Drops"がアナログ時代のイディオムがとって付けたような印象を与える模索期の作品であったが、果たして本作は96年当時の日本の音楽シーンが生み出しうる最良の収穫のひとつとなった。ストリングスを配したクラシカルな曲からしなやかで強靭なロック、分厚いホーン・セクションがスウィングするジャズまで一気に聴かせる緻密な構築力、そしてその奥に息づく強烈なロマンティシズム...陳腐な表現で恐縮だが、ムーディ・ブルースの古典「童夢」が時代を超えて甦ったような感動に襲われたのは僕だけではないだろう。 LITTLE BACH「Silly Walk」 去年惜しまれつつ亡くなった元チェッカーズの徳永"クロベエ"善也が組んでいたバンドの唯一のアルバム。もともとはツイン・ヴォーカルを立てていた彼等だったが、本作レコーディング中にヴォーカルの一人が脱退、二つの編成でのレコーディングが混在する結果となった。が、残ったヴォーカル兼ギターの小田木隆明の作曲能力がクローズアップされ、90年代を代表するパワーポップ裏名盤が誕生することに。「恋のクラクション」「さすらいのマガジン・ボーイ」等々、だまされたと思って一度聴いてもらいたい曲ばかりである。 THE MOJAS(ザ・モージャス)「音楽の王者等(おんがくのおうじゃら)」 個人的に最も消えていったのが惜しまれるバンドである。「友好間融合」といった曲名が物語る言葉に対する独特のセンス、それまでのフォークとは一線を画する太いヴォーカルと、シングル曲「成り行きの感情で」イントロのリコーダーに象徴されるアコースティックなバックとの組み合わせが生む、いい意味で土の匂いのする地に足の着いた音楽性..。こんなバンドは日本の音楽史上後にも先にもないと思う。 大事MANブラザーズバンドのコロムビア時代のアルバム&「大事な気持」 どうしても「それが大事」一曲で語られてしまうバンドである。しかし、このバンドがその後も成熟して行ったことを見過ごす手はないと思う。「草加のサザン」としてひとつの頂点に達した「夏を待つ理由」&シングル「キボウ」、タイトル曲で突如90年代にブラスロックを復活させた「きれいな花を咲かせましょう」、そしてEW&Fのブレーン達とL.A.レコーディングに挑んだ「SOS BATSU」...。ファンであることが何かの自慢になることはまずないが、巧みに洋楽を咀嚼し続けた90年代のゴダイゴとしての姿がそこにはあるのだ。その上で聴くラテン色濃いファースト「大事な気持」も興味深い。「幸せであるように」のフライングキッズと彼らを隔てたものは一体何だったのか? 長澤義塾「グラッチェ!」 結成からレコード会社との契約(91年)まで6年に渡るライヴバンドとしての経験から、彼等も洋楽の咀嚼が巧みだった。とくに本作に収録された「太陽にホエールズ」は、ビーイング系一色になる前の日本のポップロックの究極形といえるものだった。が、時代はそっちに傾いていたわけで。加えて、リズム感を重視して選ばれた歌詞が、ヒップホップが市民権を得ていない時代には、字面としてすごく間抜けに見えたことが致命傷になってしまった。それでも「Garden of flower child」や「2アウト満塁」といった曲は彼等ならではのものである。「上昇中はたっぷり夢と遊べ」というフレーズが、心に痛い。 TOPS「ラッキー・ホラー・ショー」 スペクトラムの嫡子として登場した大所帯ファンクバンドのセカンドにして恐らく最高傑作。特に好きなのは後に江川ほーじんの後任として爆風スランプに移籍する和佐田達也のペンによる「くじけた瞳のDreamer」だが、他の曲も粒揃い、構成も完璧だ。これだけのクリエティビリティを持ちながら当たったのが「黒い炎」のカヴァーというのはあまりにも皮肉。その後もダンスチームを帯同したりメンバーチェンジをしたり、バンドは迷走し、衰亡していく。個々のメンバーに華がなかったのも事実だが、やはりいじり壊されてしまったのだと思う。 以上、中古屋さんで見つけて安かったら買っても損はないですよ〜、という作品群でした。そのうち(なう)編もやる...かも。 |
MFCオーナーの感想 |
fxhud402さん、久々の投稿ありがとうございます。 前回のいまちさんに続いての「隠れた名盤・日本編」こちらもシブいセレクトですね。正直申し上げると、最初の4枚については、全く知らないバンドであり、アルバムでした。しかし、元チェッカーズの故徳永善也氏のバンドまでカバーされていたとは素晴らしい。チェッカーズ解散後、フミヤ以外のメンバーはパッとしないねぇ、というのが一般的な評価だっただけに、クロベエのバンドもチェックされていたfxhud402さんの慧眼には、ただひれ伏すのみです(余談ですが、チェッカーズ解散後のフミヤは、はっきり言って嫌いです)。 後半3バンドは、さすがに僕も知ってました。大事マンブラザーズは、あの一曲のイメージが強過ぎるけど、実はいいアルバムを作ってたんですよ、というのは誰かに聞いた事あります。洋の東西を問わず、たった一曲のヒットのせいで、正当な評価を受けられずに終わるアーティストって、やっぱ多いですよね。残酷な事に、そんな事を語るのも音楽好きの楽しみでもあるのですが(苦笑) 前にも言いましたかね、長澤義塾はメンバーの一人(ベース)が、『カルトQ』に回答者として出演しているのを見た事があります。和製ファンクだったとか。考えてみると惜しいですね。でも、それが音楽好きにはたまらないネタとして生き続けるんですよね(苦笑) TOPS、このバンドはテレビでも何度か見ました。ヒットした「黒い炎」、作詞がサンプラザ中野という事で話題でしたが、そんなに面白い歌詞ではなかったような...^^; 大人数で叩き出すド迫力の演奏が売り物だったと思いますが、当時ブレイクし始めていた米米CLUBと比べると、エンタテインメントとバカ騒ぎを混同しているように感じられて、僕はあまり好きではなかったです。ま、こんなのも今となっては音楽好きにとって、格好の酒の肴なんですねぇ(苦笑) ま、不遇だった現役時代も、そして消えてしまった今も、我々音楽好きを(色々と)楽しませてくれるバンドたちに、乾杯! てな訳で、(なう)編楽しみにしています(笑) |