File 13 ホット・ロック(1971年・アメリカ) THE HOT ROCK 監督: ピーター・イェーツ 音楽: クインシー・ジョーンズ 出演: ロバート・レッドフォード、ジョージ・シーガル、ロン・リーブマン、ポール・サンド、ゼロ・モステル モーゼス・ガン、トポ・スウォープ、ウィリアム・レッドフィールド この映画も何度も見た。テレビで放送される度に見ていたのだ。今でも、テレビで放送 されると見る。いわゆるB級ものだとは思うが、何度見ても面白いのだから仕方がない。 まだ、俳優としては確固たる地位を築く前のロバート・レッドフォードの主演作。1969年 の『明日に向って撃て』に出演して若手の有望株として注目はされるものの、この頃は まだ伸び悩んでいたらしい。この『ホット・ロック』も興行的には今いちで、レッドフォードを ブレイクさせるには至らなかったんだそうだ。くどいようだが、面白い映画なんだけどね。 レッドフォードも、この頃は颯爽としててカッコいいし。結局、内容より結果が全てなんだな 、いつの時代もどの世界も。 刑期を終えて出所した大泥棒のレッドフォードが、本人は更正して真面目に働こうと思っ てるのに、昔の仲間に引きずり込まれてダイヤ強奪計画に加担する、というストーリー である。首尾よく強奪したはずのダイヤが、ちょっとした手違いでレッドフォード達の手に 渡らず、なんとか自分らの手に取り戻そうと悪戦苦闘する展開が笑いを誘う。よく見てると 、彼らの強奪計画自体も結構いい加減だったりして、そこいらのドタバタ振りがまたおかし いのだ。本人たちが大真面目なだけによけい笑える。最後には催眠術師まで雇って、 ダイヤを取り戻すのだが、ここまで書いてお分かりの通り、サスペンスとかアクションとか 言うよりコメディみたいな趣。ラスト近く、冷や冷やしながらダイヤを取り戻したレッドフォ ードが、上着のポケットにダイヤを忍ばせて、うきうきとした表情で街を歩くシーンが解放 感に溢れて実に爽やかだ。何度見てもこのシーンは素晴らしい。よかったなぁ、と我が事 のように嬉しくなってしまう。 そう、僕は犯罪を描いた映画、特に犯罪を行う側が主役になる映画の場合、成功してくれ ないとイヤな人なのだ(笑)せっかく緻密な計画を立て実行に移したのに、最後には捕ま ったり殺されたりしてしまうと、それだけで不満なのである。この『ホット・ロック』は紆余 曲折の末、最後にはダイヤを手に入れる、という結末なので大満足。しかも、そこに至る 展開がドタバタと面白いのだから、もう言うことなしだ。こんな痛快な映画がヒットしなかっ たなんて、当時のアメリカ人は一体何考えてたんだか。 2003.11.1 |
File 14 ウエストワールド(1973年・アメリカ) WESTWORLD 監督: マイケル・クライトン 音楽: フレッド・カーリン 出演: ユル・ブリンナー、リチャード・ベンジャミン、ジェームズ・ブローリン、ノーマン・バートールド アラン・オッペンハイマー、ヴィクトリア・ショウ、スティーヴ・フランケン これは映画館で見た。小学6年の時のことだ。しかも、どういうコネか分からないが、 試写会の切符を貰ったのでタダで見た。当時は、ニュータイプの近未来SFとして、配給 会社もかなりプッシュしていたような記憶があるが、今では語られる事は少ない。あの ユル・ブリンナーの出演作として、この映画の名前を挙げる人は稀だろう。残念だなぁ。 ロボットの叛乱を通じて文明社会を皮肉っているような映画なのだが、80年代以降の 近未来SFあたりにも共通する感覚があると思うのは僕だけか。 物語の舞台となるのは、過去の世界を疑似体験できる、今で言うならテーマパークだ。 中世ヨーロッパとか西部開拓期とかで、そこの時代の人になりきって過ごす訳だね。で、 ここに登場する二人組は西部の世界を選ぶ。そこでは全身黒づくめのガンマンが行く 先々に現れて彼らとガンファイトを繰り広げるのだが、このガンマンはロボットなので 撃ってもかまわないのだ。そして、ロボットに撃たれても人間(つまり客)は死なないように なっている。人間同士(つまり客同士)の殺し合いも避けられるのだ。そんな訳で、主人公 の二人は西部の町でガンマンになりきって遊び回るのだが、だんだん様子がおかしくなっ てくる。ロボット達が人間に逆らい始めるのだ。プログラムの故障かロボットの意志による ものかは分からない。で、そのうちロボットたちが人間を襲い始める。 この黒づくめのガンマンがユル・ブリンナーだ。『荒野の七人』の時と同じ格好で登場する ことで、少なくとも僕らガキの間では話題だった。このユル・ブリンナーが実に不気味で カッコ良かったよ。セリフはほとんどないロボットの役なんだけど、無表情な演技がより 不気味さを強調していた。リチャード・ベンジャミンが執拗に追ってくるユル・ブリンナー から逃げ回る(しかも、本人は何か起こったのか、よく理解出来ていない)後半部も手に 汗握る展開でスリリング。ラストで骨と皮状態(笑)になりながらも、しぶとくロボットが 迫ってくるシーンは『ターミネーター』みたい。もちろん、この『ウエストワールド』の方が 何年も先なんだけどね。 考えてみると、人間たちにいいように使われていたロボットたちが、怒りを爆発させ叛乱を 起こす、なんてのは当時としても別に目新しいテーマではなかったのかもしれない。ただ、 そのテーマを深追いせず、理由も分からないままロボットたちに襲われるという理不尽な 恐怖をひたすら前面に出したのが、この映画の新しい所ではなかったか。同時期のスピ ルバーグ監督による『激突!』にも共通するものがある。特殊技術が進歩して、よりハイ パー化していくアクション(SF)映画のさきがけが、この『ウエストワールド』だったのかも しれない。ならば、もう少し古典(草分け)として評価されてもいいような気がするけど。 カルトなSFという位置づけが勿体ない傑作である、と僕は思うよ。 2003.11.2 |
File 15 夜の大捜査線(1967年・アメリカ) IN THE HEAT OF THE NIGHT 監督: ノーマン・ジュイソン 音楽: クインシー・ジョーンズ 出演: ロッド・スタイガー、シドニー・ポワチエ、ウォーレン・オーツ、リー・グラント、スコット・ウィルソン ジェームズ・パターソン、クエンティン・ディーン、ラリー・ゲイツ、ウィリアム・シャラート うだるような暑い夜、とある田舎町で殺人事件が起こる。捜査に乗り出したロッド・スタイ ガー演じる警察署長は、駅で電車を待っていた男を黒人だから、という理由だけで逮捕し 署に連行する。このシドニー・ポワチエ演じる不審な黒人男が実は刑事だという事が 分かり、署長は渋々協力を要請する。そして、この二人は反発しあいながらも、協力して 事件を解決する、というストーリー。よく知られたストーリーだ。この年のアカデミー賞で、 作品賞に輝いた傑作である。ロッド・スタイガーは主演男優賞を受賞した。 単なる謎解きだけに終わらせず、人種差別問題を取り込んだ人間ドラマが展開されるの が、この映画のポイントだろう。どちらかに比重を置くのではなく、非常にバランスよく作ら れている。昔のハリウッド映画の凄い所は、このようにいくつかのテーマを張り巡らせて 質の高い娯楽作品に仕立て上げている所だろう。今みたいに、ひたすらハイパーなアクシ ョンに終始しているだけではないのだ。面白いんだけど、ちょっと考えさせられる、って ヤツ。この、ちょっと考えさせられる、てのがミソなんだけど、思わせぶりで却ってイヤだ、 という人も多いかな。 黒人だから、とシドニー・ポワチエに反発していたロッド・スタイガーだが、ポワチエが見事 に事件を解決するうちに、彼の力量を認め、当初の反発心は薄れていく。ここいらは実に お気楽な展開なんだけど、例え黒人だろうと何だろうと、実力のある者に対しては敬意を 払う、というアメリカ人らしい潔さというか単純さが結構清々しかったりもする(アメリカ人 のこのような気質は、イチローや松井の人気振りを見ても理解出来るように思う)。サスペ ンスとして見るか人間ドラマとして見るかは人それぞれだと思うけど、何も考えずに見てて も面白い、一級の娯楽映画と言っていいだろう。 ラストに流れる、レイ・チャールズが歌う主題歌もいいっすよ。 2003.11.2 |
File 16 フォーン・ブース(2002年・アメリカ) PHONE BOOTH 監督: ジョエル・シューマカー 音楽: ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ 出演: コリン・ファレル、フォレスト・ウィッテカー、ラダ・ミッチェル、ケイティ・ホームズ、 キーファー・サザーランド、ポーラ・ジャイ・パーカー、アリアン・アッシュ、ティア・テサダ たまには新しい映画の事も書いてみようと思うのだ(笑) この『フォーン・ブース』つい こないだ見たばかり。映画館へ行くのも一年振りくらいだった。ビデオや深夜テレビばかり でなく、映画館へ足を運んで映画を見るのはやっぱりいい。 タイトルの『フォーン・ブース』とは、いわゆる電話ボックスのこと。携帯電話の普及により 、町中の電話ボックスは役目を終え、次々と姿を消す運命にある。そんな中のひとつ、 翌日には撤去される予定のマンハッタンの電話ボックスを舞台にストーリーが進行する、 という映画なのだ。こう聞くだけでも面白そうではないか。 コリン・ファレル演じる自称パブリシストは、とある電話ボックスで電話をかけた後、そこへ かかってきた電話をつい取ってしまう。そして、電話をかけてきた相手は、ファレルに愛人 の事を妻に告白しろ、と迫るのだ。言う事をきかないと撃つぞ、としっかりライフルの照準 を彼に合わせていたりなんかする。これでもう何が何だか分からない。電話の男は彼の 事をよく知っているのが、また不気味だ。こうして、ファレルと見知らぬ男との電話を通じ ての押し問答が始まる。電話ボックスを占拠するファレルの周りにはだんだん人が寄って きて、無理矢理ボックスから引きずり出そうとした男を、電話の男は射殺したりするもんだ から、いよいよ騒ぎは大きくなり、ついには警察まで出動してくる。ボックスから出るに 出られないファレル。一体どうなっているのか? 電話の男は何者だ? 目的は何だ? ネタばれになるので、これ以上書くのは止すが、電話ボックスという限られた舞台で、 最後まで引っ張っていくのは大したもの。主演のコリン・ファレルという人、実は知らない 人なのだが、カメラ前での一人芝居(それもほとんどアップ)を見事にこなしている。表情 だけの演技って感じ。奇抜なアイデアと巧みな演出と俳優の演技力のみで、短い(上映時 間80数分)とはいえ、立派に映画は成立するのだ。すっかり感心してしまった。 ただ、ストーリー展開については、やや疑問あり、ってとこかな。ラストにも拍子抜け、と いうかはっきり言って不満。もっととんでもない、衝撃の結末なんて期待していたのだが。 そこまで期待するのは酷なのだろうか。 ま、良くも悪くも非常にB級の香り高い映画である、と言っておこう(笑) 2003.12.7 |
File 17 宇宙戦艦ヤマト 完結篇(1983年・日本) 監督: 西崎義展、勝間田具治 音楽: 宮川泰、羽田健太郎 声の出演: 富山敬、麻上洋子、納谷悟朗、ささきいさお、仲村秀生、石田太郎、津嘉山正種、 伊倉一恵、田島令子、伊武雅刀、青野武、古谷徹 ヤマトの最初のTVシリーズが73年、最初の劇場版が76年という話を聞きました。 生まれとらんがな! 男の子と言うのは、多少軍事知識があったところで、結局は大艦巨砲主義なわけで、 この映画(正確にはビデオ)を見たのは高校2年生のときでした(93年)。 正直言って、面白くない。 絵はすごくきれいになっているし、彼我のメカ・デザインもいいんですが、ストーリーの方 が今一つ面白くない。 この話は、映画館で3時間弱かけてやるよりも、週1回の5週連続放送とかでTVでやった 方がかえって良かったんじゃないかしら。 と、ここまでですとこの映画をくさしに書いたように思われますが、ここから褒めますよ。 この映画を救っているのは音楽です! ヤマト・シリーズは宮川泰さんが担当してきましたが、今作では羽田健太郎さんとのタッグ ・チーム。 これまでのTV・映画どちらも宮川さんの音楽で十分満足していたのですが、ハネケンさん が加わったことで、プラス・アルファがいい方向に進みました。 例えば、水の惑星・アクエリアスのテーマ。 私は、この曲でコントラバスの素晴らしさをはじめて知りました。 ハイパー放射ミサイルのテーマ。 この切迫感の凄まじさは何だ! 兵器の見た目が大した事無い(威力はすごいが)のを音楽で恐怖感を盛り上げている。 そして、何よりもアクエリアスから地球へ伸びる水柱をヤマトが止めに入るシーン。 このシーンでの「SYMPHONY OF AQUARIUS」は素晴らしい。 映画がしょぼくても音楽が残る例は多いが、このシーンだけは(今作のハイライトではある のだが)映画史に残ると言っても過言ではないのではないか。 私は、大学受験で広島へ出てきたとき、この映画のビデオを買わずに、8000円くらい したサントラだけは買いました。 地球の水没を食い止めようとするヤマトと沖田艦長(生きてたの!)。 この10分くらいのシーンだけは見てください。 あとは早送りでかまいません。 スタジオ・ジブリ映画のヒットが証明するとおり、アニメ映画だからといって音楽の手を 抜いてはならないのです。 映画がこけても音楽は残るのだから・・・。 <ニセリッチーさん 投稿日2004.1.30> |
File 18 マジェスティック(2001年・アメリカ) THE MAJESTIC 監督: フランク・ダラボン 音楽: マーク・アイシャム 出演: ジム・キャリー、マーティン・ランドー、ローリー・ホールデン、アレン・ガーフィールド、 アマンダ・デトマー、ボブ・バラバン、ブレント・ブリスコー、ジェフリー・デマン、 マッカーシズムによって、多くの映画人が共産党のレッテルを貼られてハリウッドを 去っていきます。 この辺りのことは、双葉十三郎さんの本ででも詳しく。 その、映画界にとっての暗い時代を背景にしているのがこのマジェスティックです。 フランク・ダラボン得意の泣かせの映画です。 ギャグなしのジム・キャリーは”コメディアンだからこそ一流の芝居ができねばならない” というエンターテインメントの鉄則に背きません。 しかし、なんといってもマーティン・ランドー。 まだ出てたんだと思いましたが、そのくたびれ加減がイイ! 筋書きとはいえ、途中で出番が無くなるのはもったいないです。 そしてジム・キャリーが文字通り流れ着く田舎町の風景のきれいなこと。 ちょっと尺が長すぎるかな、とも思いますが、この映画のセンティメンタリズムは、実は 赤狩りの時代のハリウッド映画によくあるパターンで、ダラボン監督のあの時代の映画・ 映画人への愛の深さを感じさせます。 私のように、早くに父をなくした人には堪えられない1本だと思います。 特にラストの写真は泣けます! 最後にこぼれ話。 マーティン・ランドーといえばスパイ大作戦ですが、契約がこじれて奥さんともどもドラマ を降板します。 彼の後釜は宇宙大作戦の終わったレナード・ニモイが入ります。 実は、宇宙大作戦のスポック役は最初はランドーが演じるはずだったんですね。 ところが、ランドーはスパイ大作戦を選んだので、第二候補のニモイがスポック役に 決まったのです。 もし、ランドーがとんがり耳の坊ちゃん刈り宇宙人だったら・・・。 きっと、その後のスター・トレックシリーズも、スペース1999も無かったでしょうね。 <ニセリッチーさん 投稿日2004.1.30> |